第6話

 リノは、そのままシンイチのハイツに泊まった。

 そして、そんなシンイチと二人で、リノは、ハイツのシャワーを借りた。

 シンイチは、リノの胸の大きさに感動していた。

 そして、リノは、シンイチにキスをした。

 そのまま、夜中、二人で楽しんでしまった。

 大人の楽しみをそのまま謳歌した。シンイチは、リノの身体の柔らかさに感動していた。

「緊張しているでしょう」

 とリノは、シンイチに言っていた。

 シンイチは、リノのふくよかな身体をそのまま触っていた。

 朝、起きたら、リノは、コンビニで、シンイチと二人でおにぎりを買って、チキンを買って、リノは、青砥まで帰った。

 シンイチは、自分の部屋が、リノの香水の匂いがあると気がついたのだが、考えたら、若い女性が部屋に来たのは、何年ぶりと思った。

 シンイチは、朝、空が晴れていたのだが、どこかへ行こうと思っていた。

 そうは言っても、シンイチは、そんなに趣味があるわけではなかった。

 気晴らしまで公園に行ったが、そこは、家族連れしかなかった。

 ただ、顔を見たら、ツヤツヤしている。

 ハイツを出たら、犬を連れた年配の女性が

「おはようございます」と挨拶をした。

 そして、通りを歩くと、UberEatsの男性が、自転車でシャーッと走っている。そして、反対車線からは、クロネコヤマトのクルマが走っている。

 目の前のタナカスーパーの前を通ると、Superflyの『フレア』がかかっている。シンイチは、思わず歌いそうになった。そして、若い子連れの奥さんが、バナナを買っている。

 シンイチは、そのまま歩いていたら、地元の高校の前を通った。

 ここでは、ジャージ姿で、高校生の男女が、ランニングをしている。額には、汗が流れている。

 その時、シンイチは、岩崎良美『タッチ』を思い出した。

 まだ、新型肺炎コロナウイルス感染症が、続いていて、マスクをかけて歩いている人も結構いる。withコロナなんていうけど、まだ、マスクをしている人もいた。

 ベッドに入ってから、そして、シンイチは、もう、高校生の時、女の子と付き合いたいばかりに、バンドをしていた同級生を馬鹿にできなくなってきた。だが、こうした思いを、シンイチは、味を知ったらどうなるのか、とも不安だった。

 シンイチは、再び、京急横浜駅まで歩いた。

 今、街には路上ライブをしている若者はいない。そして、路上ライブをしていたら、すぐに警察官が、来る時代になった。

 ああ、もう時代は、変わったんだ、と思った。

 咄嗟に、シンイチは、目の前にあるレンタルサイクルを借りてみようと思った。シンイチは、そのまま、今日は、横浜駅周辺を、自転車で回ってみた。いや、何を観ていたのか、覚えていない。

 ただ、東海道五十三次の神奈川宿まで走った。そして、何故か、シンイチは、おばあちゃんが歌っていた『箱根八里』を思い出した。また、『お江戸日本橋』の民謡を思い出した。

 どうしても、シンイチは、歌のことしか思い出せなかった。

 シンイチは、歌う時だけは、強いとよくわかった。

 それ以外は、駄目だと思った。

 その時だった。

 神奈川新町駅を通った時だった。そこにカラオケボックスが、あった。シンイチは、入ろうかと悩んだが、辞めた。

 そして、そのまま横浜駅まで帰ってきた。

 自転車を返して、家に帰ろうとしたら、やはり、カラオケボックスが、あった。

 シンイチは、思わず、カラオケボックスに入ってしまった。

 そして、よせばいいのに、2時間は入っていた。ミスチルとかコブクロとかいきものがかりとか歌っていた。そして、点数は、90点を超えていた。帰るときも、何故か、歌っていた。すると、歌うシンイチを、思わず観ている人もいた。

 いや、昨日は、リノが、家に来て、セックスをして、そして、今日は、カラオケボックスに行っては、90点というハイスコアを出していた。

 そして、幸せな気分で、日曜日を過ごしていた。

 その日は、幸せな一日だった。

 次の日。

 シンイチは、いつものように京急快特で、横浜駅から品川を通って、新橋まで行った。

 そして、会社へ行くと、急に、上司のナガミネが、こう言った。

「実は、本日限りで、ここの会社がなくなります」と言った。

 シンイチは、ショックだった。

 そして、横にいるリノも、顔が蒼くなっていた。

 何でも、社長が、病気になったらしい。

 それで、どう考えたら良いのかとも思った。

 昨日、カラオケ大会で、チャンプになったシンイチは、どうコメントしたら良いのかと思った。

 リノは、涙目になっている。

 会社の他の女の子もそうだった。

 ただ、と思った。社長は、うつ病になった。だから、精神科に入院しないといけなくなった。

 そして、シンイチは、リノと二人で顔を見合わせて、この顛末をどうしようかと思っていた。

 その時、シンイチは、もう40代になってそんなに人生の残りが、少し少なくなっているのに気がついていた。

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