#41 充実した日々と将来のこと
冬休みが終わり授業が始まっても、僕達は冬休みに一緒に過していた時と変わらず、仲良く過ごしていた。
平日は授業があるし後期試験も控えてるから、いつも通り真面目に講義受けて、講義が終わった後は僕のアルバイトがある日以外は、いっつも一緒。
イロハさんが部屋のスペアキーを「いつでも来て良いですからね」と言ってくれたので僕の部屋のキーも渡して、毎週末はどちらかの部屋にお泊りする様にもなった。
そして、イロハさんはとても積極的になった。
今じゃ、手を繋いだり腕を組んだりもイロハさんからの方が多いくらい。 家の中で過ごして居る時も、以前なら対面に座ってたのも今じゃ僕の横に座るし、キスをおねだりしてくることだってしばしば。
ホント、凄い時代になったものだ。
あの、真面目で優等生のイロハさんが、キスして欲しそうな顔して甘えてくるんだよ?
それで、キスすると「むふふ」って緩み切った顔で超ご機嫌になるの。
学校だといつもキリッってしてるのにね。
凄いよね。
これも、愛の力かな。
いや、これはどう考えても、セックスをする様になったからだと思う。
セックスという羞恥心をかなぐり捨ててのコミュニケーションをしてる訳だから、手を繋いだりキスなんて、ハードル下がるのも当たり前だよね。
因みに、僕達の抱えてた物は一応お互い克服出来たと認識してる。
二人でするエッチはまだまだ勉強中なので、相変わらずイロハさんが脱線してお勉強モードになったりして変な空気になったりすることもあるけど、そんなイロハさんを見てると僕も「気負う必要は無いんだよね」って思えて、セックスを楽しむことが出来るようになったと思う。
ただ、イロハさんは、大学に行く時は今まで通り地味な服装で目立つことを避けるようにしている。
それには僕も賛成していた。
僕の為にオシャレしてメイクして綺麗になろうとしてくれるのはとても嬉しかったけど、イロハさんの最大の魅力は容姿よりもその人柄だから、無理してまで毎日そうする必要は無いと思ったし、たまのデートの時だけ気合入れてくれるのもギャップがあってドキドキするし、ぶっちゃけ今の僕は独占欲の塊みたいな物なので、容姿のことで周りからチヤホヤされるのを見たく無いってのもあったから。
と、僕もイロハさんも恋愛と学業との両立も順調で、忙しい中でも充実した学生生活を満喫しつつ、あっという間に後期試験も終わり、激動とも言える大学生活の1年目が終わった。
故郷を捨てて遠い地に来て一人暮らしを始め、大学ではイロハさんと出会い最愛の恋人となって、そして二人でトラウマを克服して、恋人としての絆を深めた。
この1年を振り返ると、『国立大目指して勉強頑張って、本当に良かった』
この一言に尽きる。
地元に居たままだったら、未だに惨めな過去からも卒業出来なかった気がするし、何よりもイロハさんと出会えてなかった。
高3の夏の僕の決断は、間違ってなかったとしみじみ思う。
そして大学生活は2年目に突入した。
2年になると、大学では1年の時よりも更に忙しくなっていった。
講義は専門的な内容になっているし、実習は増えてくし、レポートの提出もやたらと増えていた。
僕は執念だけで大学合格した様なもので、学業は得意とは言えないので、イロハさんや周りの友達に比べて人一倍苦労するハメになってたけど、それでも楽しかった。
受験勉強の時とはまるきり違うからね。
惨めな思いが辛くてそれから逃げる為の勉強と、将来の夢に向かっての勉強とじゃ雲泥の差があるよね。しかも、今は一人コソコソじゃなくて一緒に学ぶ恋人や仲間がいるからね。
だから、大学の勉強は真面目に取り組んだ。
イロハさんや周りの友達に置いて行かれないように授業では集中して聞いてたし、課題やレポートもキチンと提出していた。
なによりも、2年になってからは教師になるという目標が現実味を帯びて来たことで、モチベーションも高くなっていた。
と、すっかり僕もイロハさんに負けないくらいの勤勉な大学生になって、そして先々のことも考える様になっていた。
まずは教員資格のこと。
初等過程だから小学校の教員資格を取得するのがメインなんだけど、中学校の資格も取ろうかと考えていた。そう考えたのはイロハさんの影響で、当初はそこまでの余裕が僕には無いと思ってたんだけど、イロハさんから「折角両方取得出来る環境なんだから」と言われ、僕も頑張ってみることにした。
そして、卒業後の勤務地。
教員の採用試験をどこで受けるか。
これが一番の悩みどころ。
ズバリ、イロハさんと離れたくはないから、悩む。
これに関しては、イロハさんも悩んでて、二人で色々と相談することも増えていた。
選択肢としては
お互い地元に帰って採用試験を受ける。
イロハさんの地元で僕も採用試験を受ける。
僕の地元でイロハさんが採用試験を受ける。
今住んでるこの地で二人とも採用試験を受ける。
この4つだ。
お互い離れたくはないという考えは共通してたし、僕はその先の結婚も意識はしてた。
だから1つ目の選択肢は無くて、イロハさんは僕の地元へ行くことも前向きに考えている様だったけど、僕はどれでも良かった。
ただ、4つ目の今住むこの都市は採用試験の倍率が非常に高くて厳しいと言わざるを得なく、結局残るのは僕とイロハさんのどちらかの地元となる。
と、まぁ悩ましくはあったけどまだ先の話だし、日々の勉強やアルバイトに忙しかったし、二人で居るとなんだかんだとイチャイチャしたくなっちゃうので、悩みもソコソコに2年生になっても相変わらずいつも一緒に居て、楽しい日々だった。
それと、1年の頃とは違って一人暮らしの生活も大学の方も慣れたせいか、遊ぶことも増えた。
夏休みには大学の友達連中で集まってバーベキューしたり、イロハさんと二人で温泉旅行にも行った。
温泉旅行はイロハさんが計画立ててくれて、三泊四日隣県の田舎を電車や市バスを使ってローカルな温泉を周る旅で、途中バスに乗り遅れて何キロも歩くハメになったり、辿り着いた温泉に脱衣所が無くて、服脱ぐときはまだ良いけど、出た後に体拭いて服着るのに苦労したりと、アクシデントだらけの旅だったけど、凄く楽しかった。
何よりも、イロハさんと初めて一緒にお風呂に入れたのが嬉しかった。
毎週末お泊りを続けてたけどお風呂は毎回別だったから、一緒に入るのはこの旅で初めてだった。
ローカルの人が寄り付かない様な無人の温泉がほとんどだったから、男女分かれてない混浴が多くて、最初は「一緒でいいのかな?」と気にしたけど、計画立てたイロハさんは最初からそれを分かってたからなのか、「ここは一緒に入りましょう」って先導するように躊躇うことなく僕の前でも服を脱いでて、そんなイロハさんにちょっとした感動を覚えたんだけど、イロハさんは温泉に入る時は眼鏡を外してるので、足場が悪い露天風呂ではよく素っ裸のまま躓いて転んでて、笑っちゃいけないんだけど、普段しっかり者のイロハさんのドジっ子な一面が見れて、そういうのも含めて、忘れられないとても楽しい二人旅だった。
そして、夏が終わり秋が来て、イロハさんとの交際も1年が過ぎ、相変わらず仲良く順調な僕達は、お互い地元に帰らないまま二十歳となり、冬も過ぎて無事に3年に進級した。
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