#04 手紙が届いた
「チカ~!いい加減起きなさい!」
「んー・・・、もう少し寝かせて・・・」
「んとに!ダラけきって!もうすぐ大学始まるのに!タイチくんと一緒に通うんでしょ!また迷惑かけるわよ!」
うるさいなぁ
まだ春休みなんだから、ほっといてよ
「ご飯食べないなら片付けるわよ? それとチカ宛の郵便着てたから、机に置いとくわよ」
「んー・・・」
指定校推薦で受験した私立大に12月に合格して以来、私は気が緩んでダラけきった生活を続けていた。
昨日も帰って来たのが0時過ぎてて、更に帰ってからも他の友達と通話したりしてたから、寝たのが3時頃だった。
でも、同じ大学を一般入試で受けたタイチが合格するまではなるべく大人しくしてたし、サトシとは冬休みを最後に切った。あれ以来二人きりでは会っていない。
お互い遊びだったし、これからの大学生活を考えれば、当然のこと。
私にとって1番はタイチだし、タイチも私との約束を守って無事に同じ大学に合格を果たしてくれた。
私の高校生活は予定通り順調に終わりを迎えることが出来、お蔭様で卒業式の翌日からは残りわずかな高校生活を惜しむかのように友達と遊びまわっていた。
本当は、ここのところ受験や体調不良で一緒に過ごすことが出来なかったタイチと会いたかったけど、お家のことでバタバタしてるらしくて、会えないままだった。
でも、受験が終わってからはメッセージのやりとりもマメになってたし、大学生になればまた毎日一緒に居られるようになるだろうから、今は春には離れることになる友達との時間を優先することにしていた。
まだ眠くて重たい頭を起こして、ボサボサの髪のままスマホを手に取る。
時間はお昼前で11時を過ぎていた。
友達からのメッセージがいくつか着てるけど、その中にタイチからのメッセージは無かった。
そういえば、この2~3日、タイチとやり取りしてなかったっけ。
まだ入学式まで日にちあるし、その内落ち着いたら何か連絡来るでしょ。とりあえず今日は出かける準備を始めなくっちゃ。
ベッドから起き出して、スマホ片手に友達に返信しながら1階に降りるとお風呂に直行して、パジャマを脱いでシャワーを浴びた。
シャワーを浴びていると、脱衣所に置いてたスマホの着信音が聞こえたので、扉開けて濡れたままの手でスマホを取って通話アイコンをタップして応答すると、今日遊ぶ約束をしてたマリからで、体調悪いからとドタキャンの連絡だった。
マリとは高2で同じクラスになってからの付き合いで、卒業して春休みに入ってからも毎日の様に遊んでたし、昨日も遅くまで一緒に居た。
多分マリも寝不足とかでダウンしたんだろう。
もしかしたら二日酔いかな。
昨日は結構酔ってたみたいだし、帰りも大変だったの思い出した。
出かける用事が無くなって急ぐ必要も無くなったので、のんびりシャワーを浴びて、頭がクリアーになってからお風呂を出た。
この時間はパパは仕事で留守なので、体を拭くとタオルで髪を拭きながら裸のまま脱衣所を出てリビングに向かった。
ママがリビングでテレビを見てたので、「朝ごはん、まだある?」と声を掛けると、「もう片付けちゃったわよ!食べるなら自分で用意してちょーだい」と怒られた。
「へいへい」と答えながらキッチンに行き、冷蔵庫を開けるとプリンがあったので、1つ取ってスプーンと一緒に持って2階の自分の部屋に戻った。
部屋に戻る途中は裸のままだと肌寒くて、部屋に入るとスマホとプリンを机に置くと直ぐにタンスから下着とタンクトップを取り出して身に着け、エアコンを入れて部屋着も着込む。
エアコンから暖かい風が吹き始めたので、机のイスに座って、プリンのフタを開けると、スマホを片手でいじりながらプリンを食べた。
プリンを食べ終えると、机の上に置いてある白い封筒が目に入った。
手書きの丁寧な文字でウチの住所と『幸田チカ様』と宛名が書いてある。
裏返して見ると、差出人の名前は無い。
もう一度表を見ると、切手の上から押された消印の日付は、二日ほど前だった。
普段は郵便物なんて気にも留めてないけど、宛名の文字が見たことがある気がして気になったので、ハサミで開封して中の手紙を取り出した。
===
幸田チカ様
拝啓。
風に冷たさの残る浅春の折、ご清祥にお暮らしでしょうか。
この度は、突然の手紙を送ることをお許し下さい。
この春、私立〇〇大学に共に入学する約束をしておりましたが、一緒に入学することが出来なくなりました。兼ねてから第一志望だった国立大学に無事に合格出来ましたので、僕はそちらへ進みます。
ですから、あなたとの恋人関係もこれで終わりにします。
この手紙があなたに届くころには既にこの地を離れて、新天地での生活を始めていることでしょう。
あなたと一緒に過ごした日々は楽しかった。
中2の時、学校の校門で告白してくれた時のことは、未だに忘れられない思い出です。
高校に二人そろって合格したのを確認した時も、高校の入学式の帰り道に同じ大学に行こうと約束した時も、高1の夏休みに僕の部屋で初めてキスをした時も、そのどれもが幸せな日々で大切な思い出でした。
けど、それも、あなたの裏切りを知った日からは地獄の様な日々に変わりました。
あなたにとって僕はもう必要の無い人間だと突き付けられたのは、絶望以外の何物でも無かった。
でも、僕はもうその絶望を乗り越えることが出来ました。
新しい大学生活では、夢に向かって頑張ります。
だからあなたも頑張って下さい。
遠い地から応援しています。
今までありがとう。
そして、お幸せに。
さようなら。
敬具。
坂本タイチ
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