43歳-3
話をしているこの場所はダンジョンの中だ。
当然、魔物もやってくる。今回出てきた魔物は「スクスクヘチマ」。ツタが丸まって絡まったような球体が、猛烈な勢いで成長と枯死を繰り返しながら近づいてくる。
魔石を有する心臓部が、ヘチマのような形状のためこう名付けられた。もちろん、ニナさん命名。
「私が戦ってみるね。危なかったら助けてほしい」
二人のノエルさんが前に出る。ノエルさんの装備は、刃の分厚いダガーだ。取り回しがよく技術が活きる、勉強熱心なノエルさんにピッタリの武器である。
それぞれに一本ずつ、合計2本のダガーを持つ。以前は両手に持っていたが、体が小さい今では一本がちょうどいい。
スクスクヘチマの倒し方は単純で、ツタの球体の奥に核があるためそこを刺せばいい。その核の内側に心臓がある。
ただし、単純ながら難しい。自由自在に動くツタがムチのようにしなって行く手を阻む。核のある中心に近づくほどツタの密度が高まり、リーチの短いダガーで刺すのは大変だ。
「あー、もう! キリがないよ!」
ツタの攻撃を切り払うのに忙しく、防戦一方の様子。スクスクヘチマは次々と再生していくため、持久戦は分が悪い。
「そうだ!」
ノエルさんは縦に並び、正面の攻撃を受け止める。その衝撃が止まった直後、後ろから潜りこむように交代し、一歩ずつ確実に進んでいく。
「せっかく情報をリアルタイムで共有できてるんだから、一人づつ戦うよりも連携しなきゃね」
ニナさんも満足そうだ。
そして、時間をかけて核のもとへとたどり着くと、ダガーで深く突き刺した。
「作戦がハマると案外あっけない。楽勝だ〜」
「まあ、毎回死闘を繰り広げるわけにもいかないからね。倒せる相手はサクッと倒して、それ以外はすぐに逃げる。生き残るための鉄則だ」
何度も死んでいるニナさんが言うと重みが違う。
ノエルの分身の試運転が終わり、拠点へ戻る。
「ところでノエルさん、今日から授業どうするんですか? 二人体制?」
「うーん、様子見ながらかなぁ。まだいろいろ試してみたいし」
そこに、ニナさんが口をはさむ。
「そろそろダンジョンボスを倒したいんだよね。生徒も育ってきてるし、いいところまでいける思うんだ」
現在、学校の生徒は三人いる。そのうち、ダンジョン攻略のための戦闘訓練をしているのが二人。若くて背の高い男の二人組、カイとジュンだ。
カイは短い茶髪で、無精髭を生やしている。軽い性格でよくノエルさんにちょっかいを出し、叱られているところを見る。
普段はロングソードを使う。あまり武器にはこだわりがないそうだ。理想は、相手によって武器を持ち変えることらしい。
「容量いいし飲み込みが早いから、どんな武器でもすぐ使えるようになるんだ」と言っていた。自分で言っちゃうあたりがカイらしさである。
ジュンは反対に控えめな性格。いつもどっしりと構えて、あまり喋らない。眉間を寄せて、凛々しい眉毛を釣り上げている。
お喋りが好きじゃないのかと思ったが、どうやらただの人見知りらしい。だんだんと仲良くなってくると、向こうからも話しかけてくるようになった。
カイと違って不器用だが力が強く、体ほどの大きな盾のみを使って戦う。味方にとどめを刺してもらう前提の武器である。
カイとジュンは仲が良い。この二人はいつも一緒にいる。性格は違うが意外と気が合うらしい。
「あたしとアクト、それからカイとジュンの四人で戦う予定だ。そうだな、2ヶ月後ってところかな」
こうして、二度目のダンジョンボス攻略に向けた準備が始まった。
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