43歳-2
ニナさんと二人のノエルと共に、朝食を囲む。
「「あ! 2倍美味しい!」」
2食の朝食を同時に頬張るノエルさんたちは幸せそうだ。
「それで、ニナさん。これはどういうことなんですか? ノエルさんの姿が……」
ノエルさんが二人になったのは問題ない。『分身』のギフトを持っていると聞いたときから想像していた通りだ。
ただ、その見た目は考えていたのと違った。
今よりずっと幼くなっていたのだ。
「ノエルが『分身』で身を分けた。そして、これまでの成長も分けたんだろうね。子供に戻ってる。たぶん、年齢で言うと13歳ってところか。元が26歳だったからね」
「成長を分けるって、一体どうなっているんですか?」
「さあな。これから検証だ。まあ、『分身』は僅かだが資料もある。おおよそ見当はついてるけどな」
朝食を口に運びながらニナさんは言う。
今朝の朝食は昨晩のポトフの残りに小麦粉とバターと牛乳を入れて作ったお手軽シチューである。ニナさんの好物だ。
「ノエル、アクト。これ食ったらダンジョン行くぞ。さっそく検証だ」
ノエルさんはダンジョンは久しぶりらしく、緊張しているようだった。学校で一通りの武術を習ってきたためおそらく僕より強いのだが、今は容姿が幼いこともあって不安らしい。
ニナさんの後ろに二人のノエルがついていく。可愛らしい。見た目がもっと幼い僕が言うことじゃないけど。
「ノエルさんたちの動きはピッタリ息が揃ってますね。朝食を食べるときも、咀嚼のタイミングまで同時でした。どういう感覚なんですか?」
「んー」
「まだあんまり」
「はっきり分からないですけど」
「両方とも私って感じですかね?」
「その交互に喋るのやめてください。混乱します」
「「はーい」」
ノエルさんはこの状況を楽しんでいるようだった。学校に通いたいと言い出したときからそうだが、好奇心が強い。
というか、性格も幼くなっている気がする。肉体の年齢に引っ張られるのだろうか。
「分身ということは、本体とかあるんですか?」
「たぶん、両方ノエルって理解であってるよ。どっちも本体だ」
ニナさんが片方のノエルに近づき、デコピンをした。
「「あいたっ」」
デコピンされてない方のノエルも、同時に痛がる。
「あれ? うーん」
「ニナちゃんひどいよ!」
「痛いよ!」
「ああごめん、予想と違ったんだ。痛がるのはデコピンされた方だけだと思ったけど」
ニナさんは頭をひねり、もう一度指を構えた。
「もう一度試させて。こんどは、痛みは伝わらない、と念じながら受けてみてくれ」
「やだやだ! あ、あいたっ」
「ぎゃっ。あれ? 痛くない」
ニナさんのデコピンは本当に痛そうだ。パコンといい音がする。
「今の、私痛くなかったよ」
デコピンを受けていない方のノエルがいう。
「やっぱり痛くないか。たぶん、さっきまで痛かったのも気のせいだろう。五感の刺激がいちいち共有されてたら、生活できないし。おそらく、その刺激を受けて得た経験のみが共有されてる」
「うーん」
「まだ慣れてないから勘違いしたんだろう」
ノエルさんは微妙な反応をしている。
「ノエル、例えば片方が剣術の猛特訓したとしよう。するとその経験を、もう一人のノエルが生徒に教えることができる。先生に向いてる能力だね」
「ほんと!? 嬉しいな。もっともっと勉強して、いい先生になりたかったの。最近は教えてばっかりで自分の勉強ができなかったし」
ノエルさんははしゃいでいる。年相応のふるまいに見える。
「おそらく、これからも分身は続く。規格外に強い能力だ。ダンジョン攻略にも役立つだろうね」
そういうニナさんは、少し険しい顔をしていた。
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