27歳-2
「ニナさんが攫ってきた?」
ニナさんはダンジョン攻略の役に立つからと、金髪の少女を攫ってきたという。
「うん。正確には、甘い言葉で拐かした」
「同じですよ。むしろ卑劣さは増してます」
ため息が出る。そんなことしていいはずがない。それだと、ニナさんたちを襲って奴隷商人に売ろうとした御者と同じだ。
「ニナさん、いくらなんでもやっていいことと悪い事があるでしょう」
「待って!」
金髪の少女が遮る。
「私がお願いしたの。ソフィ……んーん、ニナちゃんに、連れて行ってほしいって」
「ノエルさんでしたっけ? なんでニナさんについて来たかったんですか?」
「ニナちゃんは私の王子様なの。私は全て、ニナちゃんのものなの」
「へ?」
なんか変なこと言ってる……。ノエルさんは続ける。
「私ね、ニナちゃんに助けられたの。灰色の家に閉じ込められたままだった私を、ニナちゃんは真っ赤なお花だらけにしてくれてね。きれいだったな~」
何いってんだこの子は。ニナさんは一体何をしたんだ。
「ノエルは奴隷だったんだ。別に助けたつもりはなかったんだけどね。あたしも家が裕福じゃなかったから、奴隷に売られそうになってさ。しかたなく暴れて奴隷商人たちを殺しまくったら、ノエルは助けてもらったと思ったみたいで。貴重なギフトもってるし、面白いから連れてきた」
僕は、この地下拠点とダンジョンでのニナさんしか知らない。外の世界でもニナさんは、随分と自由に振舞っているようだった。
「ニナちゃんは王子様で、私はお姫様なの。アクトくんにはニナちゃんはあげないよ」
子供の考えそうなことだ。そう思いながらも、少し納得もする。
ニナさんはたしかに、男女問わず人を引き付ける資質がある。ニナさんの方を見ると、得意げな顔をしている。
「こんな小さい子を誑かして、一体どういうつもりなんですか。ニナさん」
「あたし、こう見えて結構モテるんだよね。前世で何度、男たちを手玉に取ってきたことか」
聞いてないことを語りだす。ドヤ顔で語っているニナさんをみて、ノエルさんが顔を赤らめている。なんなんだこいつら。
「はあ。それで、ニナさんは何故ノエルがギフト持ちだとわかったんですか?」
「町でこれをパクったから」
ニナさんが鑑定箱を取り出す。
「大きい町の教会には大体、鑑定箱がある。鑑定されるリスクを減らすために、転生すると幼いうちに教会に忍びこんで盗むようにしてるんだ。あたしの『転生』もレアギフト、見つかると事だ」
「だから倉庫にあんなにたくさん鑑定箱があったんですか」
「そう。今回の合わせて七個目だな、ははは!」
大泥棒じゃないか。それも、毎回教会から盗んでいるとは。罰当たりな人だ。
「それで、ノエルさんはどんなギフトなんですか?」
「まあまてアクト、ひとまずダンジョンに入ろう。そこでお披露目だ」
「ひさしぶりのダンジョンだ〜〜!」
僕たちは三人でダンジョンに潜ることにした。ニナさんは嬉しそうである。
正直、幼いニナさんとノエルを連れてダンジョンに入るのは不安だったが、「入り口のすぐそばなら大丈夫だよ! あたしはこの年齢でも十分強いし」とニナさんが言うので仕方がない。
「あ〜、やっぱりダンジョンの空気は美味しいね!」
「外の森と変わらないと思いますけど」
ニナさんが久々のダンジョンに浮かれて適当なことを言っている。
一方、ノエルさんのほうは少し不安そうだ。ニナさんの後ろをぴったりとついて離れない。そこは僕のポジションだったのに……
「まずはノエルからかな。ギフトを確認しよう。そのあとはアクト。十年もあったんだ。見せたい技の一つでもあるだろう」
十年の修行の成果。いきなり披露してニナさんを驚かせてやろうと思ったのに、ニナさんはお見通しのようだった。
「ニナちゃん、私のギフトってなに?」
「え、ノエルさんも聞いてないんですか? ニナさんの秘密主義も相変わらずですね」
「秘密主義ではないさ。サプライズが好きなだけだよ」
そういいつつ、ニナさんは鞄から紙の資料を取り出した。
「ノエルのギフトは『分身』だ。歴史に残る伝説級のギフトのひとつ。このギフトの情報はある程度資料に残っているから、概要を読み上げるぞ」
そうして、ニナさんの講義がはじまった。
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