17歳-3
『不老』のせいで成長まで止まってしまった可能性がある。そう指摘された。人間の成長と老化は表裏一体で、区別のつくものではないということだろう。
しかし参った。一生このよわっちい体のままなのか。彼女のような強い体になることができないのか。
「それは……とても残念です」
「ん? ああ、残念だな。まあいいじゃないか、その分長く生きれそうだしな。強く生きろよ」
「はあ」
雑に励ましているが、彼女なりのやさしさなのだろう。あ、そういえば。
「そういえば、お名前はなんというんですか」
「あー……そうだな、ニナとよんでくれればいい」
少し悩んで彼女はそう答えた。
「それでガキは」
「アクトです」
「アクトは、これからどうする気だ」
そうだ、これからのことを考えなければならない。ここを出ると、また振り出しだ。
(ニナさん、すこし食べ物を恵んでくれないかな。働き口を紹介してもらう、なんてのは無理そうだな。だってニナさん社会と関わりなさそうだし。今も全裸だし)
そんな失礼なことを考えていると、
「アクト、しばらくうちで働けよ。『不老』を持ったあんたの使い道を思いついたんだ」
とニナさんは僕の肩を揺さぶりながら言った。
「『不老』のつかい道?」
「ああ。といっても、うまくいくかはわからんがな。まあ、しばらくは食いもんと寝る場所は用意してやる。そんな悪い話じゃないぞ」
たしかにこのまま当てもなく彷徨うよりはいい。願ってもない話だ。
「詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
「ああ、まあ後で話すよ。ていうかアクトには他の選択肢ないだろ? おまえ、大きい町には近づかないほうがいいぜ? そんなレアなギフト持ちって教会の奴らに見つかったら、すぐ捕らえられて実験材料にされるぞ」
「そんなまさか……」
ニナさんは冗談を言っているようすではない。マジかい。
「というわけで契約成立な。まあよろしくたのむぜ、アクト」
「強引ですね……いえ、ありがたいです。こちらこそおねがいします、ニナさん」
それからは、ニナさんと二人の生活がはじまった。僕の仕事は、簡単に言えば雑用である。料理と掃除、それから洗濯。(ニナさんも頼んだら服を着てくれた)
それから、お手伝いとして、なにやら怪しい道具を右へ左へ運ばされる。
ニナさんは、いつも机で何やら頭を悩ませている。本人は教えてくれないが、何かを研究しているらしい。怪しい道具もその研究の一環のようだ。
荒くれ者にみえて、実はインテリなのである。すごい。
ニナさんは逞しい筋肉の割に、あまりトレーニングをしないようだ。時たま息抜きとして剣を振っているぐらいである。
一度、ニナさんは気まぐれで「アクト、あんたも剣ぐらい振ってみたらどうだ?」といって、僕に稽古をつけてくれた。しかし、僕の身体能力があまりにも低く、またギフト『不老』のせいで筋肉の増強ものぞめないため、見限られたようである。それ以降、誘ってもらっていない。
食事は倉庫にある食材を利用して作る。減った食材はいつの間にか補充されている。ニナさんは買い出しに行ってるようには見えないが、どうなっているんだろう。
ニナさんの好物はシチューらしい。たっぷりと牛乳を使って作るシチューを食べることによって、ニナさんはあんなに大きくなったんだろう。
夜は、物置の端にスペースをあけてもらったのでそこで寝ている。倉庫のものには決して勝手に触らないようにと注意を受けた。
寝るとき、はじめは毛布だけだったが、道具を借り、隙間時間を見つけて自分でベッドを作った。
家事と仕事の手伝いしかしていないため、何かと暇なのだ。力仕事は得意ではないが、その分昔から細々とした内職を手伝ってきたおかげで、手先が器用で、素人仕事にしては丈夫なものができた。
ニナさんも感心しているようだった。
そうして、不自由のない生活を続けて、二か月がたった。
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