17歳-2
豪快で屈強な女性だ。赤い髪に、赤い瞳。右肩に、僕の体長ほどもある大剣を担いでいる。
見るものを圧倒する盛り上がった筋肉には傷が多く、トレーニングではなく実践で鍛えられたものだとわかる。あこがれを抱いてしまうような、僕とは対照的な肉体だ。
「で、あんなところで何をしてたんだ」
衝撃的な姿を見て腰を抜かしていた僕を見かねて、その女性は空いた左手で僕を持ち上げ無理やり椅子に座らせていった。
「あの、とりあえず、服を着ませんか… … ?」
担いだ剣もおろさず、剣呑な目つきでこちらを見ている。
「白か……? 帰らせるか? しかし、面倒だな。やっぱり、殺すか」
なにやら小声でつぶやいているが、よく聞こえない。怖いんですけど。父からもらったお金をさしだして、解放してもらうべきだろうか。
「とりあえず、お前はなにもので、あそこで何をしてたのか、洗いざらい話せ。内容によっては、生きて帰してやる」
「い、生きて……?」
それから、僕の人生を賭けた自己紹介が始まった。名前、年齢、生い立ち、村の状況と追放の理由、そしてたまたまこの地下室を見つけたという、いきさつ。話しているうちに、険のあった表情がだんだんとおちついた。安心しているようだった。
「おまえ、本当に17歳か? せいぜい12歳かそこらに見えるぞ」
「そうなんです。昔から成長が遅くて。でもまだまだ成長期だから、これからが勝負だとおもってますよ!」
「ははは! そうだな、その歳ならまだデカくなるさ。食事を増やせ。やっぱり食いもんが一番大事だからな」
話しているうちに、すこし楽しくなってきた。するとふいに女性が立ち上がり、奥の部屋に行って箱のようなものを持ってきた。
「最後に、この箱に指を乗せろ。これは、まあ、特殊な道具で、手をかざすと名前と年齢が分かる。そこに嘘がなければ、帰っていいさ」
いわれた通りに手をかざす。すると箱の側面から、半透明の板のようなものが浮かび上がる。驚いている僕をよそに、彼女はその板を難しい顔をしてみている。
「ガキ、あんたギフト持ちだったのかよ」
なんのことだかわからず、僕は首を傾げた。
ギフト。それは人類が後天的に授かる特殊能力のようなものだ。いつ、どこで、だれにギフトが発現するかは完全にランダム。ギフトを授かる確率はかなり低い。一万人に一人くらいしかいない。そして、そのギフトは教会に行くことで調べることができる。神様とギフトには密接な関係があるからである。
以上が彼女が教えてくれたことである。僕はギフトなんて初めて聞いた。住んでいたウド村にはそもそも教会がないため、知らなくても仕方ないとおもう。
「しかもそのギフトは、『不老』だとよ。超レアだぜ。喜べよ」
「『不老』って、どういうギフトなんですか?」
「さあ。知らねえよ。聞いたことないし」
「知らないのに喜べといったんですか……」
荒っぽい見た目の割に博識な人だとおもったが、やっぱり適当なのかもしれない。
「名前の通りだとしたら、老いないってことなんだろうけど……あ!」
彼女はにやりと笑って言った。
「お前の見た目がそんなガキのままなの、たぶん『不老』の能力だぜ」
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