異世界誘拐事件録 chapter0

第9話 上陸

　ゆらゆらと船の上で揺られながら、コロウたちは魔王の待つ島へと向かった

　コロウ「これが魔王の島か...」

　コロウたちのいる操舵席の先には、ゴロゴロと嵐の鳴り響く小さな島があった

　ルーシェ「ここに...魔王がいるんだね、クライス...」

　ルーシェは手をぎゅっと握った

　ロイス「クライスなら大丈夫よ！タフだしね」

　ロイスはルーシェを慰める

　ボルケーノ王国兵「そろそろ島につきます。覚悟が出来たら上陸の合図をください」

　ルーシェ「...上陸してください！」

　ザバーン！と兵士たちを乗せた何隻もの船が魔窟に上陸した

　コロウ「みな、武装の準備を」

　コロウたちは鎧を装着し、銃や剣を持った

　ドサ！ドサ！と大雨の中兵士たちが次々に上陸していく

　コロウ「これより！魔窟内部に侵攻を開始する！」

　ルーシェ「魔窟は小さい！すぐに魔王が見つかるはずよ！みんな覚悟しといて！」

　ロイス「頑張ってねぇー！！！」

　ロイスとタローは船の上から手を振った

　ロイス「さて、クライスに連絡しないと」

　ロイスはクライスに念で通達をした

　私たちは、島に上陸した、と

　魔窟 森林地帯

　コロウ「おそらく魔王がいるのは洞窟だ、まずはその洞窟を見つける」

　ルーシェ「洞窟？」

　コロウ「奴はエルフを島に持ち帰り、食す。おそらく逃げられないようにどこかの中に幽閉しているはずだ」

　魔窟 洞窟

　クライス「オラ来いよ！化け物が！」

　クライスは仲間たちが上陸したと悟り、洞窟の外へと市民を逃がした

　洞窟内部では、魔王とクライスの激闘が繰り広げられていた

　ルーシェ「クライス！！」

　洞窟までたどり着いたルーシェたちは魔王と接戦を繰り広げるクライスを見つけた

　コロウ「あいつが魔王か！」

　コロウの目線の先には図太い胴体に四つの細い脚、６本の腕の生えた化け物が鎮座していた

　ルーシェ「みな！突撃！！！」

　ルーシェの一言で、ボルケーノ王国兵士総勢が魔王に向かって走り出した

　ルーシェ「コロウは私とクライスの援護お願いね」

　ルーシェはコロウ肩にポンと手を置き走り出した

　コロウ「任せろ」

「さて...」とコロウは背負っていたライフルを構えた

　ルーシェ「はぁ！」

　ルーシェは背負っていた剣を抜き、魔王に飛び掛かった

　魔王「ぎゃああああああ！」

　ザク！ザク！と魔王の背中を刺した

　クライス「爆発魔法！」

　クライスの手の平から光弾が放たれた

　苦しみに悶える魔王に直撃し大爆発が起きた

　魔王「ぐぐう！」

　魔王はブゥン！とルーシェに向かって拳を振りかざした

　クライス「ルーシェ！」

　クライスは理解していた。あの時、不意を突かれたとはいえ、魔王の攻撃を直に喰らい、気を失うほどの威力であったこと

　ドゴ！とルーシェの横腹に拳が直撃する

　ルーシェ「グッ！！」

　ルーシェは洞窟奥に吹っ飛んだ

　コロウ「ルーシェ！クソ！」

　バン！バン！とコロウは銃弾を発射させるも、魔王にとってはかすり傷にもならない

　クライス「なんて頑丈さだよ、このデカブツが」

　クライスが嘆いていると

　ルーシェ「光魔砲」

　洞窟奥地から巨大な光線が魔王めがけて飛んできた

　バシューン！と魔王にぶち当たり、魔王は洞窟の壁へと叩きつけられた

　ルーシェ「魔王の力はこの程度かしら？」

　首をぽきぽきと鳴らしながら、ルーシェは歩いてきた

　クライス「なんてタフな勇者さんだこと」

　ルーシェ「褒め言葉？」

　クライス「いいや羨ましいだけだよ」

　コロウ「油断すんな！まだ生きてる！」

　後方からコロウの叫びが響き渡った

　それもそのはず、なんと魔王はむくっと起き上がり、再び迫ってきた

　クライス「来るぞぉ！」