第7話 過去の呪縛

 コロウには8歳年下の弟がいた


 両親は幼い頃に病気で他界し、今は二人で雪山でひっそりと暮らしていた


 コン!コン!とコロウは小屋の前で薪を割る


 ロン「兄ちゃん!木切ってきたぞ!」

 ロンは雪山にも関わらず、半そで短パンの元気すぎる子供だった


 冒険好きで、魔獣を仕留めては我が家の夕食に持ってくる


 コロウ「おい、あまり遠くに行くなといったはずだろう」

 コロウはロンの頭をポンと叩き、心配した


 ロン「大丈夫だって!ここらの魔獣はもう圧倒できる!」


 コロウは「はぁ」とため息をついた


 コロウ「いいか?ロン、お前は俺の大切な弟だ。母さんが死ぬ前、母さんが俺になんて言ったか覚えてるか?」


 ロン「...」


 コロウ「お前は危なっかしいから、18歳まで守ってやれってな」


 ロン「わかったよ...兄ちゃん」

 ロンは落ち込んだ様子で小屋へ戻った


 数日後、ロンの体調が急変した


 コロウ「ロン!水だ、ゆっくり飲めよ」

 コロウは布団に寝るロンに水の入ったコップを差し出した


 おかしい、この症状は前にも見たことがある

 そうだ、母さんや父さんも同じように苦しんでいた


 コロウはゾッとした


 コンコン


 小屋に港町の医者がやってきた


 コロウ「先生、こちらです」

 コロウは医者をロンの元へ案内した


 医者はロンの顔色や眼の状態を見る


 医者「ここ数日はどんな様子でしたか?」


 コロウ「いや、元気すぎるほど元気でしたよ、数日前まで森に狩りに行ってて」


 医者「狩り...ですか...」

 次に医者はロンに語り掛ける


 医者「ロン君、森の中で何か食べたり飲んだりしたかい?」


 ロン「...」


 沈黙するロン


 コロウ「どうなんだ、ロン!」


 ロン「果実を食べた...」


 コロウ「何の果実だよ!?」

 コロウは動揺した


 医者「森の最奥の大樹にできている木の実でしょう。これは猛毒があり普通の人間なら即死です」


 コロウ「先生...弟は...」

 コロウは恐る恐る聞いた


 医者「残念ですが...衰弱するまで毒が体に回っているとなると...あと半日といったところでしょう」


 コロウは絶望した。また、家族を失ってしまう


 ロン「兄ちゃん...ごめんね...おれ、知らなくて...」


 コロウ「何言ってんだ...お前のせいじゃない!俺が...俺のせいだ...」

 コロウは涙を流した


 コロウ「大丈夫だからな、どんなことになっても兄ちゃんがついてるからな...!」

 コロウはぎゅっとロンを抱きしめた


 数時間後、弟は息を引き取った


 コロウは現在でも、弟が死にゆく悪夢を見る。


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