第20話 閻魔秘書試験 筆記試験 

 

「大丈夫だよ、神原ちゃん」

「…そうはいっても…」

「筆記試験は大丈夫なんでしょ?」

「…そりゃ、そうですけど…」

 筆記試験しか受験予定の無い弥里は余裕で、カラカラと笑った。

 午前中が筆記試験で、必要な者だけが午後徳の間上級試験を受験する。

 なお、徳の間の試験では、秘書採用予定の閻魔ではなく別の閻魔が監督を担当することになっている。

 これも美紗子には大きな障害になっていた。

 いったいどんな閻魔が監督を担当するのか…。

 それが非常に不安であった。

 

 時計は午前9時を指す。

 全120問の試験問題を、9:00~10:30、10:45~12:15に60問ずつ回答する。

 筆記試験については特に問題なく解答を進めていく。

 閻魔様、白河、弥里、さらに都も指導して、勧められた試験勉強。

 そんなことを思いながら、ペンを走らせる。

 あ、弥里さんと一緒にやった問題だ、こっちは白河さんに教わった問題だ。

 閻魔様との勉強楽しかったなぁ、都さんなんでこんなの知ってるんだろう…。

 一つ一つの問題に思い出がすでにある。

 

 10:30になり、最初の60問が終了した。

「どうだった?」

 終わると隣で試験を受けていた弥里が声をかけてきた。

「…いくつかわからない問題ありましたね…まだまだ知識が不十分ですね」

「大丈夫大丈夫、不十分だろうと受かっちゃえばいいんだし」

「まぁ、そうなんですけどね…」

 

 そして10:45、後半の試験が始まる。

 同じように、一つ一つの問題で、教えてくれた人との思い出に浸りながら、解いていく。

 しかし、この後半の試験は一つ別のことを考えてしまう。

 午後の徳獲得試験。

 担当閻魔はどんな人なのか…。

 無駄なことを考えてしまうが、問題は答えられる。

 私は、大丈夫…そう自分に言い聞かせて。

 

 12:15になった。

「…さて、私は先に帰るね。

 午後はがんばってね」

「…ハイ」

 とりあえず声をかけて、弥里は帰っていった。

「…よし」

 とりあえず、白河に持たされた弁当を開けて、午後に備えることにした美紗子は、その弁当の上に何やらカードが乗っているのに気づいた。

「…!!」


『美紗子さん 今回は私の秘書になっていただくため、無理を言って秘書の試験を受けていただき申し訳ありません。

 いえ、謝ってはいけませんね、ありがとうございます、と言わせていただきます。

 あなたは絶対に私の秘書になる、そう思います。

 だから、負けないで。  閻魔』

 

 奇麗な文字でそう書かれていた閻魔様からのメッセージ。

「…閻魔様」

 そのカードは一度読んだだけで、美紗子はバッグにしまった。

「…大丈夫、私は、大丈夫」

 

 そう言って美紗子は昼食をとった。

 

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