第12話 都の意外な特技
「都さーん…」
「あ、マイスイート美紗子」
「誰がマイスイートですか!」
海水浴から帰って数日。
徳の間から帰ってくるついでに茶菓子を買ってきた美紗子は、弥里がいないのを確認し、都のところに来た。
「だってマイスイートだしぃ」
「…まぁいいです。
お茶菓子買ってきたんですけど弥里さんどうしたんですか?」
「知らないよ?
弥里、時々いなくなっちゃうけど、すぐ帰ってくるじゃん」
「それもそうですね…まぁいいです。
お茶にしましょ」
「しようしよう!」
都が子供のようにはしゃぐ。
「ところで都さん何やってたんですか?」
「あー…いや、何しろ暇でさぁ。
疑似証券取引してた」
「…はい?」
美紗子が来るまで部屋でパソコンに向かっていた都からは、意外なセリフが出た。
「徳さえ溜ってればここ、外に出ることもないでしょ?
せっかくネットつながってて、株価も判るからさぁ、『あれ買った、これは買わない、それが上がった、あれが下がった』って遊んでた」
「…なんでそんな不毛なことを…」
「暇だから」
あっけらかんと答えるが美紗子に一つ疑問。
「…って、都さん、結構頭いい?」
「そんなオバカな娘を見るような目はやめなさい。
これでも生前は一流企業のOLよ?
出身大学は…」
そこで都は、知らない人はいないであろう大学の名前を挙げた。
「ここの経済学部」
「ギャース!!」
そこは美紗子が『憧れるけど、入れないなぁ…』と思ってあきらめた大学だった。
「はっはっは! やればできるのよ私は!」
「…ソノヨウデスネ」
「何よその棒読みは!
さっきの株取引ごっこにしたって、実際買ってれば儲けられたんだからね!!」
と、パソコン中に作られている表を見せられ、説明を受ける。
「…すごい、プラスだ」
「でしょ?」
ドヤァ。
「ふぅむ。素晴らしいですね」
「素晴らしいですよ」
「…あれ?美紗子、素晴らしいですよってなんで二回言うの?」
「私一回しか…」
「あぁ、私が一度言いましたから」
「そうですか…っていつからいたんですか、白河さん!!」
「そうですねぇ、都さんが疑似証券取引をやっていたと言っていたあたりから」
「結構最初!!」
美紗子が突っ込んではいるものの、都はそこまで驚かなかった。
「というかなんで都さんそんな落ち着いてるんですか?」
「…まぁ、白河さんだし」
「ですよねぇ…」
わからない、絶対わからない。
美紗子がセルフツッコミを入れる。
「けど…都さん、これは才能ですよ。
数字を扱うのは得意なようですね」
「まぁ、生前は経理でしたし」
「…なんか都さんがいきなりすごい人みたいに思えてきた…」
「みたいって何さ!」
「…都さん」
「…はい?」
美紗子と都のボケとツッコミのような掛け合いがないかのように冷静な声を白河があげる。
「実は私、勉強したいことがあるんです。
でも、閻魔様の秘書と、煉獄荘の管理人、二つの仕事があり、なかなか勉強ができないんですよ」
「はぁ…」
何を言い出すんだろうと都も美紗子も思わず言葉を呑み込んだ。
「そこで」
白河が都にずいと近づく。
「!?」
「煉獄荘の管理人代理になってもらえませんかね…後々、管理人を任せる前提で」
「…煉獄荘の、管理人?」
意外な言葉に、二人が白河の言葉を待つ。
「ええ、煉獄荘の管理人としての仕事、都さんの情報まとめの能力を見て任せられると思いました。
それに…」
そして白河は美紗子に聞こえないように都にだけつぶやく。
「…美紗子さんにかっこいい姿を見てもらえるかもしれませんよ。
仕事してる姿を見てもらえば」
「…やる、私やるわ!」
「…?」
最後、なぜ都がやる気を出したのか、美紗子には最後までわからないままだった。
こうして都は、煉獄荘の管理人代理、将来的な管理人になるため、実践を積むこととなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。