第11話 花火の中で…

 

 昼過ぎからまた海を満喫し、今度は夜。

「久しぶりに見ましたねぇ…」

「本当…」

 夏の夜、海辺でやるといえば花火である。

「奇麗ですねぇ…」

 夏、夜の海岸に、短時間のみ咲く、化学反応の徒花。

「…」

 一瞬咲いて、すぐに終わってしまうその花に、美紗子は人のはかなさを見た気がした。

「神原ちゃん、なんか神妙だね」

「…あ、いえ…」

「ダメだよ美紗子!

 こんな時は楽しまなきゃ!!」

「…都さん…そう、そうですよね…ごめんなさい」

「…美紗子?」

「神原さん?

「美紗子さん?」

「神原ちゃん…?」

「…あ」

 メンバーから視線が集まっていることに気づき、そして気づいた。

「…な、なんで私泣いてるんだろう…?」

 無理に笑顔を作ろうとしたが、涙は収まらなかった。

「…」

「…あ」

 その時、座っていた美紗子は何かに包まれた。

「…閻魔様…?」

「美紗子さん、私、あなたがここにきてよかったと思ってます」

「…閻魔ちゃん?」

「ここはあなたが来るまで閉塞感に包まれていました。

 しかし、あなたが来てから煉獄荘は明るくなりました…あなたのおかげですよ」

「…っ」

 そんなこと、と言おうとしたが、涙が邪魔してうまく言葉にならなかった。

「…いつまでも、とは言いません。

 あなたが天国に住むまで、ここで過ごしてください…」

「…はい…」

「神原ちゃん…そうね」

 弥里が嬉しそうに答えた。

 しかし…。

「私は永遠に住みたいわ!」

「…都(さん)…」

「ははっ、都さんらしい!

 けど、閻魔様、ありがとうございます、私、いつか閻魔様のご近所さんになります!」

「…ええ、お待ちしています」

 

 そして花火が終わり、車でメンバーが引き上げ始めた。

 後部シートで都、閻魔様が寝息を立てる中、美紗子は少し目を覚ました。

 運転席の白河、助手席の弥里が何やら話しているのが聞こえた。

「…そろそろ、よさそうですね」

「もちろんさぁ、アタシだって考えてるわけよ。

 天子ちゃんの後釜決まってないとさぁ」

 弥里が普段、白河と呼ぶところで「天子」と呼んだのが少し気にかかった。

「けど、それは…」

「ええ、神原さんは素質十分です。

 閻魔様との相性、閻魔様へのリスペクト。

 後は本人のやる気と徳の問題ですね…」

 美紗子はどうやら何かの素質があるようだが、徳が足りないのが難点のようだ。

「…少なくとも後者は問題ないでしょうね。

 徳の部屋に通って順調に増やしていますよ」

「…あの試験、難しすぎるのよね…」

 いったい何のことかわからないが、美紗子はまたまどろみの中に紛れていった。

 

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