閑話 都

 

「あんたの仕業だってのはわかってんのよ!

 観念し…!!」

 その瞬間、都は自分のの横腹に鈍痛を感じた。

 

 それが彼女の絶命した理由。

 その後、彼女を殺した犯人は無事に逮捕されたが、都には関係なかった。

 

 そしてその直後、都は石がごつごつした河原に立っていた。

「…ここは…?」

 自分は山荘の殺人事件に巻き込まれて犯人を問い詰めていたはず。

 そして来ていた服も違うことに気づいた。

 これはもしや。

「…死んだんですか私」

「そうです。

 …では、ついてきてください」

 音もなく目の前に現れた幽霊のようないでたちの女性は事務的にそう言い放った。

「(あいつ、無駄な抵抗したんだ…)」

 目の前の相手には目もくれず、都は死ぬ間際のことを考えていた。

 

「…(うわっ)」

 何も言わないでいつの間にか都は案内人とともに閻魔堂の中に入った都は、思わず顔をしかめた。

 目の前にいた閻魔は、イメージしていたような大男ではなく、都が最も苦手にする、眼鏡をかけた固そうな女性だった。

 せめて大男に裁かれるならともかく、こんな会社にいたお局OLそっくりな閻魔の相手をしなければならないということで、面倒だという気持ちが先に立った。

「…では裁きを始めるわ」

「…」

 そして閻魔裁きが始まった。

「…ふうん…なるほど」

 何がなるほどなんだ…資料を見ながらつぶやかれる閻魔の独り言を聞きながら、都はイライラが募ってきていた。

「…なるほど…喜びなさい、あなた、天国行よ」

「…はぁ?」

 閻魔の顔にニタァという笑顔が出た瞬間、都の中で何かが爆発した。

「急に連れてきて喜べ? できるわけないじゃない!!」

 

 それからは、この閻魔堂始まって以来の大騒動に発展した。

 担当閻魔につかみかからん勢いでキレる都と、それをもろともせず、それでも「無間地獄に落としてやろうか!」と脅しを忘れない閻魔の売り言葉に買い言葉。

 ちょうど、別の閻魔の見学に訪れていた、のちに美紗子の担当になる「えんま様」がいなければ、「徳が最高に高い無間地獄行」という不名誉な記録は、作られる寸前で回避された。

 

 その後、えんま様の下での生活の1日目。

 昼のうちに徳の部屋にある、草葉の部屋で生きていたころに関係あった連中がどう思っているかを冷静に聞き。

 すっかり人間不信になり、煉獄荘の引きこもりとして、長い間部屋からほとんど出ない生活を送ることになる地原都。

 神原美紗子が殻を破るまでその生活が続くのだった。

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