第35話 加藤、お前は何処に行くつもりだ
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「…ほんま、どこまで行くつもりやねん。
真帆が額に浮かぶ汗を手で拭きながら後ろを振り返る。背後では同じように汗を拭くコバやんとスマホを見ている甲賀が居る。
もう心斎橋付近から優に此処迄かなり歩いてきている。
先程松屋町の人形町アーケードを抜けた。追跡する三人は加藤の反対側を駐車している車の影に隠れるように忍び歩いている。
「どこへ向かう気や」
真帆が髪を後ろに払うとコバやんを見た。目が答えを求めている。
「…僕にも分からん」
コバやんが頭を掻く。
「…ひょっとすると」
甲賀がスマホを閉じた。
「どうしたん?隼人」
真帆が言う。
「今地図見てたんやけど」
隼人が眼鏡のフレームに手を遣ると指差す。
「大阪城ちゃう?」
「大阪城?」
真帆が目を丸くする。
「いや、めっちゃあるやん」
甲賀を見る目が非難がましい。
「いや、何となくよ。この方向にはそれしかないしなぁ」
甲賀に向けられた非難を切るようにコバやんが言う。
「いや…玉造稲荷かも?」
「稲荷?」
二人が同時にコバやんに言う。
「そう、この大分先に有るんよ」
「知ってるん?」
「まぁね」
「なんで?」
「友達が近所に住んでてね」
「へぇ、同じ学校なん?」
それにはコバやんは少し黙って「うーん…」と言った。
「何?違うん?」
「まぁ違っては無いけど、しかし正しくない」
コバやんが下を向いて頭を掻いた。何か言い難そうに。
「どういうこと?」
真帆が訊く。
そこで甲賀が二人の会話に割って入る。
「まぁ、真帆。良いじゃない。何か小林君には話しにくいことがあるんだよ」
事実、そんな表情をコバやんが見せたので甲賀が話を遮るように、割って入ったのだ。
何か、言いにくいことの一つでもあるのだろう。真帆もそんな表情をするコバやんにそれ以上追及することなく、後は反対側を歩く加藤を見た。
加藤は紺色のキャップ帽を被り、悠々と歩いている。
まるでいつでも追いついて来いよと言わんばかりに。
――加藤、お前は何処に行くつもりだ。
それとも…
僕等を誘い込もうとしてるのか。
…何か、悪辣な罠にでも。
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