第22話 終了
組合へ戻ると真っ先にフェイルが駆けてきて怪我云々の確認をされるが無傷だと言って距離をとらせる
すると少し冷静になったのか私の後ろで荷物持ちをしている4人に気付き首を傾げる
「
「フェイル、やはりお前は話が早くて助かる」
「あー、やっぱりそうなんですね、あのナイフで使えちゃうんですか」
フェイルは鑑定に同席していたからな、当然ナイフの能力も知っている、その中身も
だがドッペルゲンガーは魔法として保存されていたが元は魔物だ、もし発動させても魔物として出てくるだけ、と思っていたのかもしれない
だが私はそれを自らの魔法として使いこなしている、そのことに困惑と諦念が滲み出たのだろう
そんな心情をよそに、ドッペルゲンガーから4人分の冒険者証を受け取り、渡す
「こいつらの冒険者証だ、契約通り貯金は全て私の所有に移る、組合長はもうすぐ戻るだろうが先に渡しておく」
受け取ったフェイルは他の組合員に指示を飛ばし、手続きを進めさせる
少し前から感じていたがフェイルは組合員の中でも上の立場にいるのだろうか、組合長も真っ先にフェイルの意見を聞いていたしな
まあ私からすればエルフ族好きで少し変わった人族だが
「今戻った」
「おかえりなさい組合長」
私に遅れること少し、組合長が帰ってきた、続いてベニカと未だ気絶している3人を運ぶ組合員も入ってくる
ベニカとは目が合ったが直ぐに逸らされ全員で治療室へと消えていった、組合長は元冒険者でも治療してやることにしたらしい
「あのまま外に放おって置くわけにはいかん、冒険者云々ではなく人族としてな」
「好きにすればいい、私はそこまで口を出さん」
私の視線を追って気付いたのか組合長が弁明するがそこにまで私は条件を付けていない、契約の履行さえすればその後に誰が何をしようが私は何も言わない
「あとそいつら、ややこしいからできれば引っ込めてくれ」
組合長はドッペルゲンガーを指差す
「今から戦利品の分別をするところだ、冒険者証はもう提出しているからな」
大小2つのズタ袋を用意し3人分は適当に詰めさせ、ベニカの分は丁寧にしまう、後で洗ってメンテナンスもしておいてやろう
「・・お前何モンだ、ソロでC級ってのは聞いた、素行に問題はあったが
「よく喋るなお前は」
小さい方のズタ袋を肩に掛け立ち上がる、組合長へと向き直りその眼光を真正面から見返す
「等級なんてのはお前たちが勝手に決めてるものだ、そんなものなんの指標にもならない、百戦錬磨常勝無敗の男も組合に入ればE級から始まるだろう、ほら、等級と実力は関連性がない、それに必要なことは全て組合に報告している、組合内で情報共有くらいしろ、いちいち私に訊くな、うっとおしい」
「ぐぬう」
こいつは組織の長には不向きだな、他者の定めたことを盲目的に信じ、自分で考えることをせず、組織の強みを活かせていないどころか理解もしていない、こういう『老いた子供』に割く時間はない、荷物持ち用にドッペルゲンガーを1体だけ追従され組合を出て行く
さて、久しぶりに宿に泊まって良い食事でも摂ろうか
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エレジーが出ていった組合内、怒りを抑えていた組合長は大きく声を出しながら息を吐いた、なんとか物に当たるのをこらえ、フェイルへと向く
「・・あいつは何だ、知ってることを話せ」
「これをどうぞ、まだ控えを取っていないので乱暴に扱わないでくださいね」
フェイルは数時間前にエレジーからの報告を書き上げたものを渡す、組合長は最初こそ流し読みしているようだったが途中から食い入るように見、最後には指先に力が入り紙に皺ができる、フェイルは小さくため息をつく
「この報告は確かか?」
「組合長、乱暴に扱わないでくださいと言いましたよね、それ、駄目にしたら組合長がご自身でエレジーさんにもう一度報告を聞いてきてくださいね」
「むっ、すまん」
大人しく報告書を返す、チェックするが多少字体が潰れているが読めなくはない、後で清書すれば問題ないだろう
「これは本日エレジーさんから受けた報告をまとめたものです、組合としてはまだ精査できていません」
「なら・・」
「しかし8日も潜り続け、取得品の鑑定も行っていますし
「・・・・」
組合長は足取り重く2階へと上がって行った
組合長は元は凄腕の冒険者だったらしいがその経歴は組合の運営には活かせない、実質この組合を運営しているのは副長と実質組合のNo.3の立場となる事務統括のフェイルであった
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