第21話 候補
「では契約を履行する、ドッペルゲンガー、気絶してる3人から装備を剥ぎ取れ、おい槍女、自ら渡すか剥かれるか、選べ」
「ッツ」
未だ体力が戻らないのか私を睨むことしかしない女だが次々と乱暴に剥かれ、下着のみの姿になった仲間を見て息を呑み自ら装備を外し始めた
「服まで持っていくの?」
「貯金と身ぐるみ全てが条件だっただろう、下着を残してやっているのは私の慈悲だ、あいつらが起きたらそう伝えろ、・・だが槍女、お前は負けたとはいえ1番強かった、それを讃えて服も残してやろう、装備一式と冒険者証だけ寄越せ」
「・・わかったわ、綺麗に預かっておきなさい、近い未来に取り返しに行くから」
それらをドッペルゲンガーに渡し、槍女は私を強く見つめ未来の再戦を宣言する
その強い意志に私は歓喜する、自然と口角が吊り上がる
これだ、この眼だ、決意だ、現状の破却、向上への渇望、個としての進化の
「私はエレジー、エルフ族のエレジーだ、名前を聞こう、槍女」
「西原紅花、この国風に言うならベニカ・サイバラよ」
「よろしい、ベニカ、君の再戦を心待ちにしている、これは餞別だ、持って行くといい」
私は内なる情動を抑えられずベニカの手を取り、王妃のバングルを装着させる
「次に会うときまで着けておくといい、その時に返してくれ」
「・・すごく怪しいんだけど、何なのこれ?」
「大したものではない、私なりのおまじないのようなものだ、ベニカにとって不都合なことは起きない」
「ふぅん、まぁいいわ、預かっとくわね」
指先でイジりながら怪しんではいるが受け取らせたので問題はない、外せないようにもしたからな
ベニカには光明が見えた、今は微弱だがこの先その輝きを増し、練磨し、私に見せてくれ
そして私の『
ベニカに背を向け、荷物持ちと化したドッペルゲンガーを引き連れ街へと帰る
見学をしていた周囲の冒険者たちもハケ始め、決闘の初戦は意外な収獲を得て終了した
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「ベニカ・サイバラ、組合長の権限によりお前を含めた冒険者パーティ
「・・はい、今までありがとうございました」
エレジーを見送った後、その場に残っていた組合長から正式にクビを告げられる、胸の奥から込み上げるものがあるが飲み込む
「冒険者証を・・あいつが持って行ったんだったな、ったくナニモンなんだ、あいつは」
組合長は頭に手をやり大きなため息をつく、私は何も答えない、答えられない、何も知らないから、無知、・・無力
「全員が治るまでは治療室を使わせてやる、その間に身の振り方を考えろ」
「・・ありがとうございます、最後までお世話になります」
組合長は組合員に指示を飛ばし気を失った仲間たちを慎重に運んでいく、それに付き添い、わたしも街へと戻ったが組合の治療室へ行く途中にエレジーと目が合ってしまいかなり気まずい思いをしてしまった
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