第19話 落とし所
「冒険者パーティ
「間違いはあるか?」
男は他の組合員を見回すが全員が首を振りフェイルの報告を肯定する
「違う!そもそ・・」
「黙れ!!」
一喝され冷や汗をかき、脚は震え、先程までとはすっかり別人のように縮こまってしまう、白鎧の手も胸ぐらから離れる
「ここは組合で、俺は組合長だ、ここでは俺が絶対だ、文句があるなら相手になるぞ、俺を納得させられれば話くらいは聞いてやる」
それだけを言うと男は深緑ローブから目を離し組合内にいた他の冒険者たちにも状況を聞くが全員しっかりと見たままを伝えると一層険しい顔になり4人組を睨む
「お前らも懲りないな、騒ぎを起こすのは何度目か数える気にもならんな、王国から多少は大目に見てやってくれとは言われていたがここまでだ、冒険者証を剥奪する、今すぐ置いて出ていけ」
「まっ、待ってください!俺たちは・・」
「パーティメンバーだろう?やらかしたのが1人だとしても止められなかった、諌められなかった責任がお前たちにはある」
白鎧の言葉もすぐさま潰し、続きを封じる
3人は目線を伏せ動かないが深緑ローブは気を持ち返したのか私を睨んでくる、私はナイフの切先を向け先程の
「何の真似だ?」
「それは私の台詞だ、割り込みはしてはいけないって子供の頃に教わらなかったか?」
「・・組合内で勝手は許さん」
「5対1でも私は構わないが?」
男の顔に青筋が浮かぶ、だが組合長としては私の言葉に乗るわけにはいかない、結果的にだがここの建物や組合員を救ったのは私だからだ、もし
礼も言わずに私を責めればフェイルは大怪我を負ってもいいと言っているに等しいから
「・・落とし所は?」
「いきなり殴りかかられたんだ、殴り返すのが当然だな」
「殺す気は?」
「殺さないでほしいのか?資格を剥奪するのだろう?お前とはもう無関係じゃないか、なぜ生かしたがる?」
「・・」
「・・まあいい、貸し1つで手を打ってやろう」
私の言葉に組合長は鼻を鳴らし、大きく手を打ち鳴らし4人へと向き直る
「お前ら4人、こいつと決闘しろ、買ったら剥奪は取り消し罰則だけで済ませてやる、負けたら剥奪だ」
「それに追加だ、負けたら貯金と身ぐるみ全部置いていってもらう」
「なっ!?そんな条件はっ・・」
白鎧のが声を上げ、反論しようとするがそんな無駄なことに時間を割く気はない
「私は断られても問題はない、冒険者でなくなったお前たちを殴り返すだけだからな、だが今この男の案に乗るのなら死ぬ心配はしなくていいし、もし勝てば冒険者にも復帰できる、メリットしかないだろう、さあ、選べ」
静寂が場を支配する、時間がとてもゆるやかに進んでいると錯覚するほどの静けさ、それを破ったのはやはり原因たる男だった
「舐めやがって、4対1で勝てる気かよ」
深緑ローブが相変わらず私を睨みながら立ち上がる
「なんだお前、立てたのか、3対1になると思っていたぞ?」
ニタニタと笑顔で奮い立たせてやると目を血走らせ息が荒くなる
「・・決闘は街の外でやるのが決まりだ、移動しろ」
4人が先んじて移動を始め組合長も出て行く、ここまで一言も話していなかった女2人が深緑ローブを責め立てる声が聞こえ始める
周りの冒険者も後方をついて歩く、見学でもするつもりなのだろうか
「エレジーさん、先程はありがとうございました、でも大丈夫なんですか?」
フェイルが心配そうに見つめてくる
「絶対というものは存在しない、だから大丈夫とは言えないし言わない、私は嘘が嫌いだからな、だが、殴られて殴り返さないなんて私からすればありえないことだからな、もしあいつらが私より強くても、殴り返さない理由にはならない」
「・・エレジーさんは強いんですね、そんな生き方ができる人族なんてほとんどいないと思います」
「私からしてみればそんな不自由な生き方をしているお前たちの方に感心するよ」
私も組合を出て町の外へ向かう、フェイルは残るようで『お気を付けて』と私を送り出した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます