第14話 門



「(門か、毛色が変わったな)」

5階層から続けて6階層も探索し、新たに地図を書き上げ7階層への階段を降りた先にこれまでにはなかった重く閉ざされた門が行く手を阻んでいた

これまでの階層の地図を見る、やはり下層に降りる度に狭くなっている、直前の6階層など200m四方ほどしかなかった、そして現れたこの門

「(もしかして終点か?)」

5階層、6階層ともに厄介な魔物が多く、対処に苦労したがその分というか宝箱はいくつか見つけており気分は高揚していたがこのイレギュラーが思考をフラットに切り替えさせる

「(さて、ここまでに鬼も蛇も討伐してきたが何が出るのかな)」



重い門を押し開き中へと歩を進める

今までの部屋とは違い妙に明るく広い、階層が丸々吹き抜けの一部屋となっており、奥の方、部屋の中央あたりに人影が見える

周りに注意を払いながら顔の視認できる距離まで近付く

相手の顔は、私とそっくりだった

私とそっくりな『そいつ』は私の顔を見るとニタッと笑い、短杖を抜き魔法を放つ



「『魔法弾マジックバレット!』」

飛来する魔法弾をステップで避け私も短杖を抜き、相手を観察する

姿形は私と同じ、声も酷似しているように聞こえる、魔法も私の知識にある魔法だが

「『魔法散弾スプレッドバレット!』」

「『対魔法盾アンチマジックシールド』」

躱せないほどの面での攻撃にだがシールドで受け切る、『そいつ』は距離を取り次の魔法を放つ

「『圧縮コンプレッション貫けペネトレイト魔法穿線マジックレーザー!』」

その魔法はシールドを容易く貫き、私の右肩を抉り取り、腕が落ちる

それを見た『そいつ』はより一層口角を上げ歪んだ笑みを浮かべる、が

肩の傷口が泡立ち、盛り上がると床の右腕がひとりでに跳ね上がり傷口にくっつく

数秒で泡立ちが収まると何事もなかったかのように右肩は元に戻った

その様子に『そいつ』は先程までの笑みを失い、引きつった焦りの表情を浮かべていた

短杖こそまだこちらに向けているがさきほどまでのような好戦的な態度は見られない



「『瞬迅ブリンク魔力矢マナボルト』」

「!!『対魔法盾アンチマジックシールド!』」

「『座標変更チェンジ・コード』」

「!!ごぁ!」

正面からの私の魔法に対して盾を張った、が、座標変更チェンジ・コードで魔法を背後へと移動させた、それには対応できず『そいつ』に魔法は直撃し腹部から魔力矢マナボルトが生えている

「『ほどけアンタィ縛れバインド蛹のようにライク・ピューパ』」

腹部の魔法矢が細い糸状にほぐれ、全身に何重にも巻き付き『そいつ』の首から下は完全に身動きできなくなり床に転がる、頭元に立つ



「多少驚いた、まさか私をコピーするとは、が、お前は私じゃなくて『私が取り込んだエルフ族』だけをコピーしたな、何故だ?」

「ぅぐっ!、っぎっ!」

「話せないのか?」

『そいつ』はうめき声を上げ体を捩るばかりで私の声に反応を示さない

「惜しいな、お前は私にはなり得ない、学びを得ないお前にはな」



5階層で手に入れた大型ナイフを頭へ突き刺すと『そいつ』はナイフに吸い込まれるように消えてしまった


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