第13話 宝箱
あの後、アンデッドに対して様々な検証を行った
結果、今の私ではアンデッドの討伐は不可能だった
魔法での破壊も、物理での破壊も、破壊自体は可能だったがあの再生力の前にはただの徒労であった
なので魔物に遭遇すればその都度魔法で足を地面に埋め、動きを封じて放置する、という進み方をしていた
実体を持つ魔物はこの対処法でよかったのだがゴーストという魔物は実体を持たないという厄介な魔物で地面に埋めるという対処ができない相手だった
しかしというかやはり魔法は効果があるようで魔法で檻を作り閉じ込め、それごと地面に埋め込むという力押しで進めた
そうして進んで小部屋に着くとようやく宝箱を見つけた
周囲を警戒しながら近付き宝箱の正面にしゃがみ込む
前回の反省を踏まえて宝箱の継ぎ目、その僅かな隙間に指をつけると指先から液状化させ内部に侵入させる
内部全体に広げ罠の有無の確認を行う、今回は当たりのようだ、罠らしきものはない
指を元に戻し宝箱を開けると中身は鞘に収まった大型のナイフが1本と小さい宝石のようなものが4つ入っていた
「(大型ナイフか、特に普通のナイフに見えるが)」
抜き出し刃を見るが変わった様子は見られない、ポーチにしまう
宝石もまとめて拾い上げる、不揃いで不格好なカッティング、魅せる商品としては不適格だろう、だがエルフ族の目を通せばこれらに魔力が宿っていることが見て取れた
「(魔晶石か、知識にはあるが手に取るのは初めてだな)」
魔晶石、魔物や魔獣の体内で稀に生成される魔力の結晶であり源ともなるもの
以前、私が取り込んだ純魔結晶の下位互換ともいえるものだが魔晶石も有用なものには違いないだろう、全てポーチへとしまう
さて、5階層の探索と地図埋めの続きといこう
=============================================
時間は少し戻り、場所は4階層の大部屋、B級冒険者パーティ『
オークは2m超えの巨躯、力と速さにバランスのとれた筋肉、刃を通しにくい毛皮を持つという物理で戦う前衛職には相性の悪い魔物である、代償というべきか魔法にはほとほと弱いという弱点もあるが3人は攻撃魔法が使えず、苦戦というほどではないが決定打が欠けており長期戦になっていた
「おぉいヘンリー!きちぃってコレは!」
「これ以上の消耗は流石に辛いぞ」
「・・ああわかった!戻ろう!」
各々応戦していたオークを怯ませ通路へと走る、3階層への階段まで走り切る、途中でも魔物と遭遇するが全力で無視するか受け流すかし、やっと3階層まで戻ってきた
「はぁあ、やっぱキツいな」
「オークは物理で戦うには相性が良くない、何度も試しただろう」
「悪いな、つきあわせて」
階段を上がりきったところで呼吸を整える
4階層は何度も挑戦しているがやはりオークが、というか魔法使いがいないのがネックとなりそれ以上進めないでいた
倒せなくはない、だが1体に対する労力がこれまでの比じゃないのだ、スタミナが持たない
仮に時間をかけ倒し続けても次の階層へ着く前に動けなくなるだろうことは容易に想像できた
そんな無茶を押し通そうとするほど3人は馬鹿ではない
「あの子、いなかったよな?」
「ああ」
「やっぱすれ違ったんだって、1本道じゃないんだからよ」
「あるいは」
「・・まぁ冒険者だしな、そういうこともあるかもな」
そもそも今日は3階層で終える予定だったのだがエレジーのことが気になったヘンリーが2人に頼み4階層まで進んだのだ、ソロなら3階層には行かない、もし3階層へ進んでもすぐに引き返してくるだろうと思っていたが結局そうはならず4階層まで進み、自分たちが引き返してしまった
明確には言葉にしないが、カルロスはエレジーが死んでしまったのだろうという意味を口にする、ジョシュもそれに同調する
「・・ああ!なんであの時すぐ呼び止めなかったかなあ!」
ヘンリーは大きく息を吐きながら天井を仰ぐ
押し寄せるのは『もしも』の後悔のみ、あの時、ああすれば、こうすれば、なんて無体なこと、だがそうせずにはいられない
「ヘンリー、今日は終わりだ、戻ろう」
「・・わかった」
カルロスに同意し3人は地上へと足を進める
最後にヘンリーは4階層への階段を振り返ったがそこには何の姿もなかった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます