第12話 5階層
男たちを追い越し魔物を排除しながら進み私は5階層へと辿り着いていた、ダンジョンに入ってからどれだけ時間が経ったのかはもうわからなくなっていた
地下で日の光もなく周囲も変わり映えのしない景色であれば当然といえば当然だろう、時間に追われているわけでもないので問題はない
1階層に続き2階層、3階層、4階層でも宝箱を見つけることはできなかった、やはり宝というだけあって遭遇率は相応に低いのだろうか、それとも通った道順が悪かったのか、はたまたただの運か
すでに宝箱に対する興味ではなく意地に切り替わりダンジョン探索を進めていた、悪い癖だと自覚しつつもこれがわたしという『個』の特性なのだから仕方がない、短く息を吐き地図を開くが未完成のようだ
「(ああ、フェイルが言っていたな、『一応言っておくと5階層が現在の最終到達点です、なので地図は未完成です、更新されれば都度、組合で販売されます』と)」
確かに下層に降りる度に魔物の強度が上がっているのは感じていたが、簡易魔物図鑑を開く
5階層の魔物は
「(・・なんだそれは?)」
神聖な祝福?そんな情報はエルフ族の知識には存在しなかった、故に対応する魔法もないだろう
しかし、神聖に祝福とは
連想するのは宗教関連だな、敬虔な信徒が神や仏という絶対的上位者へ服従、信仰し、心の寄る辺とすることで精神的支柱を得るあの行為だが
「(・・そんなものがどうして魔物に対する有効打となる?)」
考えられるのは神聖や祝福の言葉の意味がこの星では全く違う意味を持つということか、もしくは以前の星にはなかった魔力のように、信仰を攻撃に転換できる方法があるのか
「(わからないな、だからこそ面白い、興味深い)」
次々と私を楽しませてくれる、気分の高揚を感じる
だが今は後回しだ、この情報が正しいなら私にはこの階層に有効な手立てがないことになる、それはよくない
だが他人の情報は参考にはしても鵜呑みにはしてはいけない、自分で色々と試して確認する必要がある
方針を決め歩き出す、ついでに未完成の地図に書き加えて完成にもっていこうか、中途半端なのは嫌いだからな
歩き始めてすぐの通路でアンデッド2体を捕捉した、見た目は肌の色がおかしい以外はほぼ人族と変わらない、1体は
「(お前たちで色々と検証させてもらうぞ)」
神聖やら祝福とやらに頼らずに討伐することは本当に不可能なのか、短杖を構える
「『
魔力で生成した炎を高速で射出しアンデッドの頭部へ直撃させる、頭部の大半が弾け飛び残った部分に炎が残り肉体を焼く、が、傷口から急速に肉が盛り上がり、その過程で炎も消え、2秒足らずで完全に元通りになった
「(ふむ、効かないわけではないのか)」
私に気付いた2体がこちらに向かって走ってくる、では次の検証だ
「『
泥濘んだ泥に足を取られ動きが止まる、泥の手が地面に引きずり込み胸の高さまで沈めた状態で地面を元に戻す
アンデッドはうめき声を上げたり上体をくねらせるだけで地面からは抜け出せない
「(やはり魔法は効いているな、なら神聖や祝福とは、・・再生力の阻害か?)」
1つの考えに至るが少ない情報から導いた可能性の1つだ、正解率は高くないだろう、だが目の前のこいつらは魔法で動けない状態だ、時間もある
さあ、検証を続けよう
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