第11話 2階層
宝箱の罠から数時間後、私は2階層への階段を降っていた
結局1階層では正しい意味での宝箱には出会えず、簡易魔物図鑑に載っていた魔物には全て遭遇したので降りることにした
1階層では遠くに他の冒険者の発する声や音が聞こえていたが2階層になるとほとんど聞こえてこなくなった
だが生命の気配は知覚できたのでこの階層にも冒険者はいるようだ、階段を降りきったところで地図を開く
2階層は1階層と比べて僅かに狭い以外は変わらないように見える
蟻の巣状の通路と部屋が入り組み、最奥の階段まで同じような造りになっている
簡易魔物図鑑には1階層から引き続いてスライム、センチピード、リージョンラットに加えて
加えてゴブリン、ホブゴブリンは魔物とはいえ知能が高く、死亡した冒険者から装備を奪って武装する個体も確認されておりベテランでも手を焼く場合がある、ね
「(なるほど、2階層から冒険者は死に始めるということか)」
1階層の魔物には注意する点や対処法しか書かれていなかったが2階層の魔物には明確に冒険者が魔物に敗北すると書かれている
死にたくなければ降りるなと、そういうことだろう
まあ、私には関係のない話だな
1階層と同じように階段を目的地に大回りする道筋を定め歩き出す
しばらく通路を歩いていると先の部屋から唸り声と金属の鳴る音が耳に届く、どうやら冒険者が魔物と戦っているようだ
フェイルが言うにはこういう場合の基本行動は3つ
1つ、離れた場所で静観
2つ、迂回
3つ、請われた場合のみ加勢
だそうだ
戦いに割り込むのは罰せられることこそないが暗黙の了解というやつでマナー違反らしい
たとえ死に瀕していても請われなければ助けるべきではないと、そういうことだそうだ
戦って敗北しても、それを受け入れ、納得して死ぬならそれが正しいと、そんな覚悟をもった者の
これには私も同意するところだ
以前に『どんなに今が苦しくても辛くても、人間は生きるべきだ、必ずそれを乗り越えた先に幸せな未来があると信じてる、だから僕は人を助け続ける』なんて言葉を大真面目に言った男がいた
相手の事情や思考、感情の一切を踏みにじり、己の信じる『正しさ』とやらのために他者を根本から否定するおぞましい男
結局その男は自分が助けたと思い込んだ連中に拒絶され、否定された末に壊れたのだが
あんなやつは滅多にいないだろうがそういうやつを生まないためにマナーというものはやはり必要なのだろう
通路が終わり部屋を見回すと3人組の冒険者がゴブリンとホブゴブリンの群れを相手にしている
戦闘は冒険者側が圧倒しており静観し始めてから数十秒で群れを全滅させた
「待たせたな!通ってくれ!」
後方の私には気付いていたようで剣を収めた男がその場から声をかけてくる、部屋を抜け次の通路へ向かうため男たちの近くを通る
「では通らせてもらう」
「ああ」
礼儀として軽く声だけかけ続く通路へと足を進めた
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エレジーが通路へと消えたすぐ後
「・・あれっ?もしかして今の女の子ソロ?」
「の、ようだな」
「まじか、あの子が斥候で後からパーティメンバーが来るもんだとばかり」
「でも、2階層ソロは少ないけどいないわけじゃないじゃん?」
「んぅ、まあな、よし、少し休憩にしよう」
B級冒険者パーティ『
地面三方向に松明を刺し周囲を警戒しながら各々水と保存食を口にする
「さっきの子だけどよ、一瞬しか見てねえけど武器持ってるようには見えなかったよな、もしかして魔法使いだったんかな?」
リーダーのヘンリーがメンバーのカルロスとジョシュに話を振る
「わからん、が、腰辺りに短杖らしきものが見えた、おそらくは」
「へぇ、ソロの魔法使いが2階層をねぇ、ならC級以上は間違いないだろね、D級じゃ無理だよ」
「まじか、顔しっかり見ときゃあよかったなあ」
ヘンリーは悔しがり暗闇が広がる天井を仰ぐ
「俺等のパーティ、魔法使いいねぇもんな」
「男3人のパーティに面識のない女が入ってくれると思うのか?」
「「・・そりゃそうか」」
B級冒険者パーティとしてダンジョン内外問わず活動してきた、そろそろA級への取っ掛かりが欲しいがメンバーに攻撃魔法を使える者がいないというのがネックだった
B級相当で魔法使いともなればフリーの者はなかなか見つからずメンバー探しは進展していなかった
「んぅ、でも1回だけ!、1回だけ声かけてみようぜ?ソロなら3階層には行かずに引き返すと思うしそん時にさ」
「まぁダメ元でいいんじゃね?」
「・・相手の迷惑にならないならな」
「うっし!決まりな!ならそろそろ行くか!」
ヘンリーが立ち上がると2人も続きダンジョンの奥へと歩みを進める
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