第10話 1階層



クステンに到着してから4日経ち街を回りきり今日からダンジョンへ潜ることにした

人族の多さ故かまだ視線を感じることが多いが私が気にしないのでそれは最初から問題ではない

この4日で準備は済ませている、組合で地図を買い、ポーションを買い、保存食もいくつか買った

道具の全ては腰のポーチを通して自分の体内に保管しているので他の冒険者と比べてかなり身軽だ

門へ向かっていると辺りには冒険者らしい身なりのやつらが増えてくる、こいつらもこれから潜るのだろう

いざ到着すると門の前では組合員がこれから潜る冒険者のタグから名前と等級を紙に控えており、それが済んだやつから門を通って行く



「(なるほど、そうやって潜ったきり出てこないやつは死亡とみなされるわけか、他者から報告が上がるか死体が運び出されればいいが魔物がいる中でそんな悠長なことはしてられないか)」

私も流れに従い組合員にタグを見せる

「アンタ1人か?、C級とはいえ組合としてはパーティを推奨しているが」

「いや、問題ない、初めて潜るのでな、今日は触りだけのつもりだ」

「・・そうか、だが気を付けてな」

「ああ」

返却されたタグを仕舞い門を通りダンジョンへと続く石の階段を降りる

1人やパーティのみで潜るのならさぞ雰囲気が出るのだろうがここは唯一の入り口だ、周りには冒険者がぞろぞろいるし地下の暗さも周りが松明や灯りトーチを使用しているのではっきりと通路が見えるほどになっている

「(さて、どう進めて行くか)」

1階層の地図を広げる、おおよその縮尺も載っており街と同じか僅かに広いくらいの面積となっている

そこを蟻の巣のように通路と部屋が複雑に入り組み構成されている

2階層への階段は最奥の唯一行き止まりとなっている部屋にあるようだ

最短で進めて楽しみを浪費することもないな、大回りして階段を目指すことにして歩き始める

周りの冒険者も各々散り始めたので灯りトーチを発動し追随させる、光がなくても私は見えるがもし冒険者と遭遇したら相手は見えないからな、無駄な手間をわざわざ増やすこともない



数時間後、何度か他の冒険者とかち合ったり、幾度も魔物を排除しながら2階層への階段までおおよそ半分の距離まできた

遭遇した魔物は粘性生物スライム甲殻百足センチピード病巣汚鼠リージョンラットなど生物強度は決して高くないが不意を突かれれば冒険者生命を容易く断たれるような油断ならないやつらばかりだ、組合で地図を買った際に受付のフェイルに勧められた小型の簡易魔物図鑑と見比べながら進み辿り着いた小部屋の隅に宝箱を見つけた

「(あれがそうか)」

ここまでいくつもの小部屋大部屋を通ってきたが何もなかったがようやくここで当たりを引いたらしい

正面にしゃがみ込み開けると中から3本同時に矢が放たれ1本が腹部へ突き刺さる

残りの2本は斜め左右方向後方へ真っ直ぐ飛んでいった

「(なるほど、こういうのもあるのか)」

開かれた宝箱の中身は矢の射出装置であり魔物の素材などは入っていなかった



腹に刺さった矢を抜き損傷部を再構成し元の見た目に戻す

矢を捨てるとその矢と宝箱が魔物の死体のように空気中に溶けるように消えていった

「(このタイプの宝箱は魔物という扱いなのか、・・比較対象がないからわからんな)」

新たな疑問を生んだ部屋を後にし歩みをを進めることにした


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