第8話 途中参加
馬車で移動し始めて4日後、要塞都市クステンまでの全道程のおよそ3分の2を過ぎた辺り、陽も傾き始め野営のため馬車が止まり各々準備を始める
そこを狙ったように
護衛の冒険者4人は武器を構え、同乗していた親子連れと初老の男は急いで幌馬車へ逃げ込む
私は反撃のために狭い幌馬車には戻らず外で待機することにする、護衛の実力の確認も込めて
幅広の大剣を持った男と手甲を持った女が前衛、長杖を持った男女2人が後衛か
鋼の絆も4人組だったな、この配置が人族冒険者の基本形なのかもしれないな、後衛1人の補助の下、前衛が注意を引きながらも倒し、もう1人の後衛が隙をついて高威力の攻撃をすると
なるほど、理に適っているように思うがそれは各々が万全であるからこそ発揮される陣形だ、後衛の片割れ、あの魔法使いの女、戦闘前から様子がおかしい、なんならふらついている、呼吸も不規則で目の前のことに意識を向けられていない、魔法を撃つが直撃させられず魔法使いとしての役割を果たせていないように見える
ほら、変にかすらせるから前衛を無視してお前に飛びついてきたぞ、どうする?
魔法使いの女は寸前で噛みつこうとするグレイエナの牙を長杖で防ぐが勢いのまま押し倒されてしまう
前衛が気付くが手一杯でカバーに入れない、もう一人の後衛も前衛の取りこぼしに気を取られている
正直、思ったより実力が低いな、私と同じC級と言っていたが、同じ等級でもピンキリということなのか、‥挽回の一手はなさそうだな、短杖を抜き魔法使いの女へと向ける
「『
地面から蔦が幾本も伸びグレイエナに絡み、女から引き離す
呆ける女の前で蔦はグレイエナを振り回しもう一人の後衛へ迫っていたテラーエイプに叩きつけると衝撃で二匹まとめて破裂する
それを見た前衛の2人も僅かに気を取られその隙をグレイエナか突くがその足下から新たに蔦が伸び次々と魔獣を絡め取っていく
それに気圧されたのか逃げようとした後方の魔獣も全て絡め取り数秒で場を制圧する
4人全員が私を見て固まっている中、土埃に塗れた魔法使いの女へと言葉を投げかける
「抑えててやる、今すぐに攻撃しろ」
「・・ぅ」
「?」
「ぅっええぇぇ」
この女、吐きやがった
「メイト!?」
「メイトリッドさん!?」
大剣持ちの男と長杖持ちの男が真っ直ぐ駆けてくる
こいつら馬鹿か?私が抑えているだけでまだ魔獣の群れは生きてるぞ、手甲を装備した女は周囲と私の抑えた魔獣の両方を警戒してその場を動いていない
「ラグナ、回復魔法をかけてやってくれ」
「はい、『
「待って、違うの」
咳き込み、口内に残った吐瀉物を吐き捨てながら回復魔法を断る
「思ったより早く来たみたい」
少し呼吸を整えて発せられた声はまだ弱々しい
「何が来たんだ?」
「・・っ、り」
「あん?何?」
「つわりよ!つ!わ!り!」
「・・えっ?」
「アンタとあたしの子よ!・・ぅっ!」
女はまたしてもえずく
こいつらは最早護衛依頼を忘れているようなので絡め取った魔獣はそのまま締め潰した
口や尻から血や内臓を吐き出した個体もいたのでその臭いで更に女は吐いた
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「助けてもらった上に仕事まで引き受けさせちまって本当に悪い、クステンに着いたら必ず礼をさせてくれ」
「護衛依頼は実質失敗ね、わたしはまだまだ未熟」
「すみません、私たちが至らないばかりに」
「ラッキーだったな、私がここにいて、だが失敗は誰でもする、今回得たことを次に活かせ」
吐き散らした魔法使いの女、メイトリッドが戦線離脱することになり今は幌馬車の中で横になっている
その代わりに元々の依頼元である御者の了承のもと、私がクステンまでの残りの道程をこいつらに雇われる運びとなった
大剣持ちのローマン、手甲装備のクラメ、長杖持ちのウルスラグナを合わせた4人で冒険者パーティ『道(ロード)』を組んでいるそうだ
しかしローマンとメイトリッドが結婚しメイトリッドが引退するとのことで故郷に帰るついでにこの護衛依頼を受けたという
妊娠はなんとなく気付いていたらしいがローマンには話しておらず故郷までなら大丈夫だろうと思いこんでいたが読みが外れあのザマだ
馬車の中から絵本を読んでやっていた子どもが私をじっと見ているが生憎だがもう読んではやれない
代わりにそこで横になってる女で遊んでな
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