かぜを描く

三玉 一郎

かぜを描く

県境緑のものとなりにけり

田水張り天上下りてきたりけり

代掻の水面に風がかぜを描く

代掻の後いきいきと寒風山

鳥海山の水敷きつめる代田かな

田植唄飛行機雲はまつすぐに

忙しなく水輪のうごく田植かな

早苗饗へ鷺も鴉も来たりけり

ふるさとは植田の風でありにけり

雨乞の後なほらひが長々と

仏壇の座布団借りる昼寝かな

天井に風の生まるる走馬灯

雨蛙この世にひとつ下りてきし

入れし物だけがただあり冷蔵庫

後ろ手に田んぼ見てゐるアロハシャツ

だんだんと道細くなる帰省かな

野球部の大きな声の夏休

ごつごつと音がしさうなトマトあり

田を渡る風を呑み込む茅の輪かな

村の墓ひとつ青田を見てゐたり

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かぜを描く 三玉 一郎 @kyichiro

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