Day28「方眼」#文披31題

 角を右に、少し進むとまたも現れた辻を今度は左に。不自然な壁に仕切られ、どこまでも延々と続く四辻に、さすがに辟易としてくる。折角、あの子が今夜は冷しゃぶだと言っていたから早く帰ろうと楽しみにしていたというのに、これでは遅くなってしまう。


「やれ、いい加減飽きたよ」


 何度目かもわからない曲がり角で、苛立ち任せに手近な壁を殴りつけた。きん、と耳鳴りのような音が響き視界が歪む。

 閉じた瞼を開いた先には、見慣れた住宅街に早変わりしていた。やれやれとひとつ息を吐いて、小走りになって家を目指す。


「おかえりなさい。遅かったですね」

「ただいま。ちょっと寄り道させられてね」


 曖昧な答えに首を傾げつつ、あの子は冷蔵庫から皿を取り出す。あたしが帰ってこない間に食事の用意はすませていたらしい。待たせてしまったのを申し訳なく思ったところで、その手元を見て顔が強張る。

 よく冷やされた菜葉と玉ねぎ、艶々の豚肉が涼やかに盛られたその器は規則正しい真四角だった。

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