Day24「ビニールプール」#文披31題

 輝かんばかりの彼の笑顔に、嫌な予感を察知する。見せびらかすように掲げられたパッケージには涼しげな鯨が描かれていた。


「嫌です、絶対。嫌」


 駄目ではなく、嫌で返すと彼の顔が一瞬で沈む。罪悪感を覚えはするが、さすがにこれは受け入れがたい。


「何でさ!?表でやっていいって大家に許可までもらったのに!」


 何てこと相談してるのかと俺は頭痛を訴える頭を押さえた。どう見ても子供用のタライより少し大きい程度のこれで、大の男がふたりも遊ぶなんて滑稽通り越して恐怖しかないだろう。


「絶対楽しいと思ったのに……」


 その拗ね方があまりに悲しげで、とはいえ俺にだって譲れない外聞くらいはあるわけで、その板挟みで胸の内がぐらぐらと揺れる。


「……足を浸して、行水するくらいなら」


 妥協してみたつもりだったのだが、唇尖らせ黙りのまま彼は恨めしげにこちらを見る。ビールもつけると言い足したところで、ようやく目がまたちらりと光った。

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