Day23「静かな毒」#文披31題
今日も今日とて、当然のごとくあの子の部屋に上がり込み向かい合って食卓につく。鯖の切り身を箸でほぐしながら、あの子の視線はつけたままのテレビの方を向いている。
「こうして見ると増えたもんだねえ」
思ったままに呟くとあの子がこちらへ向き直った。最初は不揃いだった器も今では揃いになっている。それだけではない。部屋のそこここに転がったあたしの私物は決して起き忘れだけではなく、半ば故意に転がしているものだ。
「随分毒されてきたじゃないか。あたしなしじゃ、もう寂しくてならんだろう」
味噌汁腕を片手に笑うと、きょとんとした顔であの子の箸が止まる。無防備な顔を愛らしく思っていると、中身を飲み下したその口が開いた。
「それはあなたも同じでしょう」
予想外なその言葉に、うっかり今度はあたしの手が止まる。
「もう俺と俺の飯なしじゃ物足りないんじゃないですか。ああ、安心してください。毒なんて盛ってませんよ」
冷ました顔でそう返されてしまい、なるほど毒されてるのはお互い様か。
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