Day20「甘くない」#文披31題
パソコンに向かいながら小腹を満たそうと机の上を手で弄る。しかし思った箱に指が触れることはなく、おかしいと思い顔を上がると目当ての箱は彼の手のなかに収まっていた。
あ、と俺が止める間もなく彼は包み紙を破り中身を頬張る。
「……なにごれ苦い」
「勝手に人の物を食べるからですよ」
眉間に深い皺を寄せ、舌を見せながら彼が言う。案の定な反応に思わず苦笑いがこぼれた。箱には96パーセントと書いてあったのだが、やはり意味は知らなかったらしい。
「そういう種類のチョコレートです。ほら」
残りを寄越せと出した俺の手に、紙箱ではなく彼の手が乗る。あれよあれよと言うより早く引き寄せられて、顔が近づく。触れた口元の隙間から、無遠慮に割り込んだ舌が絡む。生暖かい熱とともに、じりとほろ苦いカカオの味が広がった。
「うん。口直しには丁度いい」
離した唇をひと舐めして、満足そうに彼が呟く。それに絆されてやるのも業腹で、返事代わりにチョップを見舞った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます