Day18「占い」#文披31題
『今日の最下位は――ごめんなさい、魚座のあなた!』
思えば今日は朝からついていなかった。
出がけに見た占いは最下位。自転車がパンクし、遅刻寸前で走って向かった講義は臨時休校。暇を持て余して訪れた食堂は調理場のトラブルか何かでこれまた急な休業、パンを求めて並んだ列は俺の一人前で売り切れた。せめて何か飲もうと自販機の前で財布を開くと、手が滑って小銭をばら撒き、よりによってその下に滑り込んだ五百円玉はとうとう回収できなかった。
小さいこととはいえこうも色々続いてしまうと自然とうんざりするもので、アパートの階段を踏む足がいやに重い。
「あ、いいところに帰ってきたね。おかえり」
登り切ったところで玄関が勢いよく開き出迎えられた。下駄を引っ掛けて寄ってきた彼が手元から甘い香りが立ち上る。紙袋の中身はどうやら菓子らしい。
「商店街で美味そうだったから買って帰ったんだ。まだ焼きたてだよ」
なるほど、占いも案外馬鹿にできない。嬉しそうに笑う彼につられるように、俺は笑って頷くと彼の後を追い扉を閉めた。
『そんなあなたのラッキーフードはたい焼き!甘いものに癒されてくださいね』
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