Day17「砂浜」#文披31題
ざりざりと湿った砂を素足で踏む。濡れたそれが肌にまとわりつく感触が気色悪い。眼前の暗がりを照らすように、水面は青白く光り時折波を立てていた。
川であればまだいかばかりか縁があるが、海というのは縁遠いせいか、どこかよそよそしく底が知らない。恐れ、とはこういうものをいうのだろうか。
「瀬多さん」
不意に呼ばれた方を見れば、波の間で見知ったあの子の顔があった。片手を大きく上げたその動作はどうやらあたしを手招きしているらしい。
「瀬多さん、早くこっちに……」
「行くものかよ」
足元にあった拳ほどの石を拾い上げ、力任せに投げつける。ばしゃりと大きな飛沫が上がり、あの子の姿が溶けるように消え失せた。
「何だ、当たらなかったか」
手応えの無さに思わず舌を打つ。寄せた波が未練がましく擦り寄ってくるようで不愉快だ。やはり不慣れな場所には来るものじゃない。
早くあの子のところに帰りたいなと、重たい足を踏み出した。
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