Day13「流しそうめん」#文披31題
あたしは怒っていた。
今晩は流しそうめんにしよう、と朝方あの子は確かに言ったのだ。雑誌やらテレビやらで見る竹のそれは大層楽しげだった。用意やら片付けやら大変だろうがそこはあたしも手伝う気でいた。
しかし今目の前にあるこれは何だというのだ。
「なにこれ」
「何って、だから流しそうめんですって」
机の上には楕円状のたらいのような何か。あたしが聞き齧った流しそうめんとは似ても似つかない。
「まさか竹の方期待してたんですか。でも、これはこれできっと楽しいから」
困り笑顔であの子が側面のボタンを押す。かちりという音とともに水面が揺れたかと思うと、そのままぐるりぐるりと回り始めた。
「ほら、流しますよ」
流れるというか回るというかなそうめんに釣られるように視線もぐるりと回る。
思わずしばし追いかけてしまい、はっとしたところであの子と視線がかちあった。こら、そんな微笑ましげな顔やめなさいよ。
あたしは怒ってたんだからね。
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