Day11「飴色」#文披31題
多めに刻んだ溢れんばかりの玉ねぎを油をひいた鍋に入れる。最初は中火で炒めていき、水分がとんできたら少し火を弱めに。あまりかき混ぜ過ぎては色づかないので、多少の焦げは気にせずにおく。
美味しそうな飴色になったあたりでほっと一息。最初の頃は飴を通り越して炭にしてはあの子を呆れさせたっけとひとり懐かしむ。
肉、人参、芋を加えて更に炒め、たっぷりの水で煮込んでいく。野菜が柔らかくなったところで一度火を止めルーを溶かす。ふわりと腹の虫をくすぐる匂いが広がった。
「ただいま。わあ、カレーですね。美味しそう」
「おかえり。遅くなるって言ってたから、勝手にあがって作っておいたよ」
換気扇から漏れた匂いで察していたのか、帰宅した家主の顔が綻ぶ。冷蔵庫の野菜を適当に入れてあたしが雑に作っても、そこそこ美味しく仕上がるのでライスカレーは素晴らしい。
「もう食べられるよ。手を洗ったら、ご飯よそってくれるかい」
うん、と答えた背後のあの子が一瞬置いてあっと呟く。何事だろうと振り向くと視線の先には水に沈んだ生米の姿。
やれやれ、なかなかどうして格好がつかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます