Day10「ぽたぽた」#文披31題
甘辛い味に糖蜜でざらりとした表面、ぱりぽりとした食感が生む音は耳にも心地いい。一枚また一枚と手が伸びてしまい、気づけば空袋がこんもりと山を作っていた。
これで最後と思いつつまた手を伸ばしたところで、目の前の大袋がなくなり空振った手のひらが畳を叩く。
「こら。一人で食べ尽くす気ですか」
袋を攫っていったあの子に顰めっ面で叱られた。食事が入らなくなるぞと言われても、あたしからすれば別腹にすらならない程度ではあるのだが、それは禁句だと心得ている。
「悪かったよ。つい止まらなくてしまってね」
いつの間に封を切ったのか、煎餅を咥えたあの子に詫びを入れた。あたしといえば、何となしの手持ち無沙汰から空袋を手に取り裏面に目を向ける。つられたように、あの子の方も手元の袋を裏返した。
「……知恵袋じゃない」
「これはこれで面白そうじゃないかい」
遊びでふたり始めた早口言葉は、思いのほかに盛り上がった。
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