Day8「こもれび」#文披31題

 梅雨の中休みなのか、頭上には真っ青な空が広がっている。溜まった洗濯物を干していたところ出かけようと押しかけてきた彼に手を引かれ家を出たのが少し前のこと。

 男二人が手を繋ぐのは目立つと思ったが、ご近所さんに彼の人たらしぶりは知れているせいか、あら仲良しねなんて微笑ましく挨拶されるしまつだった。


「お待たせ。炭酸でよかったかしら」

「うん、ありがとうございます」


 自販機の方から戻ってきた彼から缶を受け取る。ひんやりと汗をかいたきんぞくの冷たさが心地いい。


「前に来た時は満開だったのに、すっかり葉桜だねえ」


 そう言って彼が見上げた先には桜の木が青々と葉を茂らせている。一緒に花見をしたのはついこの間の気がしていたけれど、気づけば汗ばむ日が増えて暦の上でもすでに夏だ。


「夏休みに入ったら、今度は川が海にでも行きましょうか」


 思いつきで俺から誘ってみたら彼の顔が嬉しげに緩む。足元には穏やかな木漏れ日がふたりの影を落としていた。

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