Day8「こもれび」#文披31題
梅雨の中休みなのか、頭上には真っ青な空が広がっている。溜まった洗濯物を干していたところ出かけようと押しかけてきた彼に手を引かれ家を出たのが少し前のこと。
男二人が手を繋ぐのは目立つと思ったが、ご近所さんに彼の人たらしぶりは知れているせいか、あら仲良しねなんて微笑ましく挨拶されるしまつだった。
「お待たせ。炭酸でよかったかしら」
「うん、ありがとうございます」
自販機の方から戻ってきた彼から缶を受け取る。ひんやりと汗をかいたきんぞくの冷たさが心地いい。
「前に来た時は満開だったのに、すっかり葉桜だねえ」
そう言って彼が見上げた先には桜の木が青々と葉を茂らせている。一緒に花見をしたのはついこの間の気がしていたけれど、気づけば汗ばむ日が増えて暦の上でもすでに夏だ。
「夏休みに入ったら、今度は川が海にでも行きましょうか」
思いつきで俺から誘ってみたら彼の顔が嬉しげに緩む。足元には穏やかな木漏れ日がふたりの影を落としていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます