Day4「触れる」 #文披31題
梅雨の長雨とはよくいったもので、豪雨とは言わないまでも雨雲が切れる気配はなく、しとしとと雨音が続いている。こうなると外に出るのも億劫で用事がないのをいいことにふたりして部屋にらだらだらと篭ってしまう。
「本当にらよく降るねえ……」
気怠げにそう呟きながら手慰みのように彼の指が俺の髪を梳く。背後から肩に寄せられた顎が動いてむず痒い。
天気予報によると今週はずっとこの調子のようだ。
「まあ、こうして一緒にのんびりできるのは悪くない」
指先が耳をつたい、目元に進む。傷つけまいととするようにそおっと、親指の腹に撫でられ思わず瞼が震えた。
「止みそうにないね、雨」
「夜までずっと、降るみたいですよ」
触れそうで触れてくれない掌がもどかしくて、思わず控えめに頬を寄せる。俺より少し低い体温が気持ちいい。いつの間にかこちらを覗き込んでいた彼の顔と目が合い、じわりと顔に熱がのぼった。
触れて欲しい、と口に出すのはまだ今の俺には難しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます