第20話 かけがえのない幸せな一時

ほら、シャルル…お口の周り、ママが拭くから…少しじっとしていてね…




(私は夢を見ているのではないのかと思う様な一時を味わっていました。私とシャルルの向側の席に、愛する人が共に食事をしている。この時間が永遠に続けばいいのにと思うほどに、私は運ばれてくる料理にナイフとフォークを中々入れられませんでした。隣で美味しそうに食べるシャルルに視線を向けて、息子の口の周りをナフキンで綺麗に拭き取りました)




…今の君は…一人の母親になっているね…それを近くで見られて微笑ましいし…傍に居られなくて、2人には本当に申し訳ないと思っている…すまない…




(シャルルのお口の周りをナフキンで拭き取り終えると、清二、彼の言葉は、この幸せな一時が、今は終わりがある幸せである事を思い出させる一言でした。でも、私は信じています。いつの日か私達三人、親子が堂々と街を手を繫いで歩ける日が訪れる日が必ず来るのだと…それには彼にだけ責務を押し付けてはいけない…彼の隣を歩ける様に私も、もっと強くならなくてはいけません。一人の母としても…そして一人の妻としても…)




清二…私は貴方が迎えに来るまで…、ただ待っている様な女ではありませんからね…本国に帰ったら、貴方を逆に私達が迎えに行けるくらいに強くなって見せます…。この子を二度と悲しませたりしない…。強き母になってね…。そして…遠い…いつの日か…貴方と…シャルルとフランスの街並みを眺めながら歩ける妻になって見せます…だから貴方も、無理だけは決してしないで下さいね…あまりに迎えに来るのが遅いと…私達の方から本当に…迎えに伺います…か…ら…ね…




(ナイフとフォークをお皿に置いて俺は、彼女の言葉を聞きながら彼女の声が震えて来ているのが分かった。そして最後に彼女は涙を流しながら、力強く俺を見つめて語りかけて来ていた。そして調理室の方からは、ローズ家のお抱えシェフ達が調理の手を止めて、クリスさんと共にセシリアの言葉を聞いていた。そしてセシリアが流した涙は、料理に流れ落ちて行っていた。そしてシェフ達、料理を運ぶ役割は、メイド達が行っていた。彼等、彼女等は俺達に暖かな拍手を送っていた)

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