第21話 次世代の薔薇を担う夫婦

(夕食を終えた俺達は、セシリアの膝の上で眠っているシャルルを二人して眺めていた。近くにはクリスさん達、執事達が警護してくれていた。ソファーに座りながら俺は、あと少しで再び2人と離れ離れになる事を考えると、自分のあまりの無力さに手を力強く握り締めていた。すると、セシリアがシャルルの髪を撫でながら、俺の拳に手を添えて来てくれた)




…清二、自分だけを責めないでね…貴方の分も私は、この子を守って見せるから…それに…迎えに来てくれるのでしょ?…それなら希望を持ちましょう…そしていつの日か…あなたのご両親の故郷に私達を連れて行ってね…手を伸ばせば届くという…素敵な青空の元に…皆で行きましょう…




(三年前、図書館で勉強していた際に俺が昔、父と母の故郷の村に訪れた時にした話を思い返していた。都会では決して味わえない新鮮な空気、そして空を見上げれば手が届かんばかりの風景の事を、大人になった今でも、脳裏に刻み込まれるほどに素敵な風景をクリスさん、シャルル、そしてセシリア、皆で歩く事が出来れば、どれだけ幸せな事かと思っていた)




ああ、そうだな…その際は皆でピクニックでもしてな…




(セシリアの手を力強く握りしめて再び出会えることを願って俺はゆっくり席を立って傍に居る。クリスさんに声をかけた)




クリスさん、2人の事を頼みます…これ以上一緒にいると、本当に別れるのが辛くなります…俺の代わりに2人の事を守って下さい…俺が2人を迎えに行く…その日まで…




(2人に背を向けたまま俺は、執事の皆様、及び、メイドの方々に深々と頭を下げていた。すると、クリスさんはあいも変わらず、その大きな手で俺の肩に手を乗せて、語りかけて来てくれた)




清二様…この再会は別れではありませんよ…そしてあなた方の幸せな宝物を再確認出来た、幸せな一時ではありませんか…ですから、これは別れではありません……そしてお任せください。我等ローズ家、全使用人、セシリア様、シャルル坊ちゃまを必ずお守りする事を、ここにお誓い致します…。全員!!我らのもう一人の旦那様に、敬礼!!!




(クリスさんの力強い言葉に身震いするほどの物を感じた俺は、ゆっくり視線を上げると、シェフ、メイド達、執事達が力強く俺と背後にいるセシリアとシャルルに向けて、敬愛の念を力強くこめた敬礼を行ってくれていた。そんな皆様の姿を見ていると、俺は自然に涙を流し始めていた。そして隣にはシャルルを抱えたセシリアが、俺の肩に寄り添う様に、皆の姿を胸に刻み込んでいた)

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