第16話 再び紡ぐ2人の愛

流石フランスの秘宝と呼ばれるだけの事はある…容姿端麗…そして日本語まで熟知している才色兼備…君は本当に素晴らしいね……と…世間一般的には君の事を称える者達が数多くいるが…本当の君は……




(梨華の口から出た、秘宝という言葉が私は嫌いでした。私は皆様と同じ、血の通った人間なのに何故、宝石でも扱う様に対応されなければいけないのか、私はそれが悲しくてしょうがありませんでした。そして彼女の最後の言葉を聞きながら、梨華の横顔を見ると、彼女は何かを見て微笑んでいました)




…清二は元気ですか?…あの人に近しい貴女なら…




(私の言葉に、彼女はゆっくり立ち上がると、私の方に視線を向けずに言葉を放って来ました。その彼女の言葉に、私は身震いをしました)




……その君の答えは…、自分で聞くといい…さっきからフロアがやけに静かになっている事に…、君は気が付かないのかな?何者かの力が及んでいるとしか言えないな……まぁ…悪い者ではない様だがね…




(確かに言われてみれば、このフロア一帯から買い物客の皆様のお姿が突然見えなくなっていました。レジ…セルフ対応のレジ以外も、無人となっていました。そして彼女の息子さん、雅樹君は、母親である梨華の元に戻ってきていました)




これは…今度…君と…また会える時まで貸しとしておくよ……十二分に幸せな時間を満喫して来なさい…愛する彼と…ね……それでは…また会おう…セシリア・ローズ君…行くよ……雅樹…




(彼女は去り際に、私に日本円の一万円札を渡して来ました。そして彼女の指差す方向を見ると、私は自然と立ち上がり、歩み始めていました。彼女が言っていました。自らで確認しなさいと……私の愛する人は、3年前よりもさらに素敵な男性になっていました)




……清……二……




(そして彼の腕の中には、気持ち良さそうに眠る、愛しいシャルルの姿がありました。そのシャルルの髪を優しく撫でながら、清二と二人して、私達の愛しい子を笑みを浮かべて見つめていました。そして私は梨華に対して、心からの感謝の言葉を送っていました)




Merci du fond du coeur/メルスィ・ドゥ・フォン・ドゥ・クーゥ


(訳・心の底からありがとう)




(また貴女とも必ず会えます様に、と心に願いました。こうして私は清二と再び会えたのですもの…貴女ともまた会えますよね…梨華…)

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