第16.5話 鎧を脱いだ戦乙女
……貴方か…彼と彼女を引き合わす為に…このフロアから全ての者達を一時的に退去させたのは…
(セシリア・ローズ、彼女の元を離れた私は、少し離れた場所で3人の事を見守り続ける。バトラーの姿を見かけて、この者が仕掛け人だなと、直感で把握できた。その私の問い掛けに対して、バトラーは礼儀正しく頭を下げて来ると…彼女同様に、日本語で語りかけてきた)
我々に代わりお嬢様をお守り頂きまして、誠にありがとうございます……私は…ですね…、ずっとあの光景を見たかったのです…清二様、セシリア様、そしてシャルル様、御三人が揃う姿を…
(バトラーの横に立って、遠くに見える細野君達の姿を見れば、彼等は本当に幸せそうな表情を浮かべていて、彼の腕の中で眠る報道で聞いたシャルル・ローズ君を細野君は、大事にあやし始めていた)
…私から言わせれば…何ら変哲もない…どこにでもいる幸せな親子の姿ではないかな…私からは…そうとしか見えない…が…ね…。時間が決められているのであろう?…彼等が幸せな時間を満喫していられるにはな…
(私の言葉に対して、バトラーの彼は歯を食いしばりながら握り拳を作る姿に、私は深いため息と共に…地位も名誉も本当に、何故こうも人を縛り苦しめるのでしょうね……私も…少しだけ一人の女に戻りましょうかね。彼等のあんな幸せな光景を見せられては…先を歩く者として…一肌脱がなくてはいけませんものね)
少し席を離れます…その間、この子の事を頼みます…もしもこの子の身に何かあれば…私は…貴方を絶対に許さない!!ふふっ…冗談ですわよ…すぐ戻ります…雅樹、いい子にしているのよ?…お母さん、少し電話をして来るからね…
(愛する息子とバトラーに背を向けると、私はポケットからスマホを取り出して、ある場所に電話をかけ始めた。本当なら私から、ここに掛ける事は、雅樹のこと以外ではないと思っていた)
もしもし……お久しぶりです…お義母様…一つ頼みがありましてお電話させて頂きました。…………いいえ、私はまだ戻るつもりはありません…その代わり、一度だけあの人の妻として出席させて頂きます……私も独りの親という事ですわよ…貴女と同じ…女ですもの……パトリック・ローズ卿をお義母様、貴女なら足止めできると思いましてね…
(セシリア…君の…いいや、君達の幸せな未来の為に、私も再び女の姿に戻るとするよ。こちらこそ、本当にありがとう。君の元を去る際に言ってくれた言葉が、本当に嬉しかったよ…また必ず会おう。そして私はお義母様に用件を伝えると、お義母様は深いため息と共に、渋々了承して下さいました)
貴女も…また不思議な方と巡り会ったものですね…いいでしょう…梨華さん、貴女の頼み、聞き入れましょう!!但し梨華さん、一度口にした事は覆らないと心に……まぁ貴女なら、言わなくともわかっているでしょう…それでは忙しくなりますわね…失礼致します…また後程…
(通話を終えた私は、バトラーの元に戻ると、雅樹と仲良く遊んでいる、何ら変哲もない光景を見つめていた。そして遠くにいる細野君達の方を見ると、どうやらシャルル君が目を覚まし始めた様だった)
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