第15話 皆が後見人

(俺は3年ぶりにローズ家の関係者と再会していました。あの日、空港にお見送りにまで来てくださったクリスさんと俺は、再会していました。彼は俺の膝の上で寝ている幼い子を見ると、何やら安心したように微笑みを浮かべられました。そしてゆっくり俺の隣に腰掛けると、クリスさんは語りかけて来ました)




お久しぶりですね。清二様…、お元気でしたでしょうか?…少し失礼致しますね。すぐ戻りますので、お待ちになっていて下さいませ…




(クリスさんの問い掛けに、俺は小さな幼子の髪を優しく撫でながら彼の言葉に返事を返しますが、クリスさんは席を立つと、何やら無線機で他の者達に伝えていました)




……坊ちゃまは無事発見した。旦那様達にも御伝えせよ…問題は解決したとな…それと、デパートの中にいる者達は、至急連絡を寄こされたし…皆にはやって頂く事がある……協力、感謝致します…




(首をかしげて彼のやり取りを聞いていた俺は、コートを脱いで、幼子が風邪を引かないように上からかけました。すると、クリスさんは連絡を終えたのか、俺の隣に戻って来ました)




大丈夫なんですか?貴方がここにいるという事は、彼女も近くにいるのでしょう?そして、あの人も…




(あの人とは、セシリアの父親の事です。そして父親から3年前に言われた言葉を思い出していました。彼女に近寄る事を禁じられている事を。だから俺は、彼女に会いたくとも会えない。でも本当は会いたい。彼女と会って、色々と話し合いたかった。そんな俺の迷っていた心に、クリスさんは笑みを浮かべて語りかけて来ました)




清二様、お嬢様に対する思いは、3年前とお変わりないでしょうか?




(クリスさんからの問い掛けに、俺は幼子を膝の上に寝かしつけたまま、幼子を起こさないように真剣な表情で見つめます。そして彼に、俺は力強く答えました)




はい!!セシリアに対する思いは、あれからも、一片の曇りもなく変わりありません!!…今でも彼女の事を愛しています…貴方に言いましたよね…離れた地に居ようとも、彼女の事を見守り続けると…そして愛し続けると、その想いは変わりませんよ…これからもね…




(俺の返事を聞いたクリスさんは、爽やかな笑みを浮かべて俺に頭を下げて来ました。そして再び彼は、俺と彼女を繋ぐ架け橋になってくれました)




…試すような真似をして申し訳ございません……セシリア様は…いま私達がいる、この同じフロアにいらっしゃいます……長くて一時間です…。それ以上は、我々も旦那様の足止めは出来兼ねます……いま再び清二様、貴方様にお頼み申します…秘宝などでなく…一人の女性、セシリア・ローズ様の事をお願い致します。




(その言葉と共に、彼は深々と俺に頭を下げて来ました。そして幼子を抱っこしたまま、クリスさんの指差す方向に歩き始めて行きます)




ありがとうございます。クリスさん…


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