第14話 凛としたぶれる事のない花
(クリスが飲み物を買いに行っている間に、私は店内をシャルルと同い年くらいの子が、ご両親の手を握りながら笑みを浮かべている光景を見ていました。私も普通の女性なら、清二、貴方とあのようにごく普通の幸せを手に入れる事が出来たのかしらね…?)
……あら…これは…
(私の足元に小さなボールが転がって来ると、傍にはシャルルと同い年くらいの子が立っていました。そして、その背後から凛々しい女性が近寄ってきます。黒髪で綺麗な顔立ちをしていて、私とはまるで違う力強さを持った女性が、其処には立っていました)
こら!雅樹…ちゃんと謝りなさい…!!
(私に近寄る事を迷っている子の背後で、まるで子を叱りつけるように語りかけて来ました。すると、男の子は私に頭を下げて謝って来ました。この子のお母君なのだろうと、私は何故かわかりませんが、確証みたいなものを得ました)
…いいのですよ……ごめんなさいね…
(小さなボールを手に持つと、男の子に手渡して返しました。そして私は男の子の母君、その女性の年齢はは若いように見えました。私より少し年上なくらいに感じました)
君…セシリア・ローズだね…隣…失礼するよ…
(私の名を口にすると、彼女は母国の方達とは違って見えました。私を一人の女性、一人の人間として見てくれました。母国の皆様のように、触れる事を恐れ、近寄ろうとしない方達とは違って見えました。そしてあの人と同じ空気を感じました。なんだろう、この女性は…、不思議とあの人に近しいものを感じる。そして彼女はポケットから煙草を取り出すと、口にくわえ始めました。そして一瞬私の事をチラった見た後に、小さく囁きかけて来ました)
……なるほど……彼が…惹かれるのも無理はないな……雅樹、他の人達に迷惑が掛からないようにしなさい…
(えっ…えっ…この人は清二の事を知っている女性なの?…だとしたら…あの雅樹という子は…まさか…と、不穏な考えが頭をよぎると、女性は突然笑い始めます)
ふふっ…いま君が頭によぎった事は違うよ…。なんでわかると言った顔をしているね。君は思っている事が顔に出やすい……あの子は…確かに私の子だよ…。でも、いま君が頭に浮かんだ男性の子ではないよ…。あっ申し訳ない。自己紹介が遅れてしまったね…私は橘梨華だよ…。君が思い浮かべた人とは同じ職場の同僚みたいな仲だよ…決してやましい関係ではないから安心したまえ…
(清二の知り合いの女性、私は初めて嫉妬という感情を抱いていました。さっきの子が橘さんと清二の子ならと、女性を一瞬でも憎んだ自分を、恥じていました。そして次の彼女の言葉で、私は驚きます)
月に一度だけ…あの子とは会えるのだよ…父方のご両親が厳しくてね……君も同じじゃないのかな?セシリア…公には君の父親の子と公表されているが、本当は君と細野君との子なのだろ…
(見破られたのは、初めてでした。シャルルが清二との間に出来た子と見破られた事に驚いていると、彼女は笑みを浮かべながら…優しく語りかけて来ました)
なんでわかると言った表情だね……ふふっ…わかるさ…君のさっきの必死な形相を見ればね…お腹を痛めて産んだ子ということくらい…同じ母親なら…ね…
(清二、貴方のお知り合いの女性に、私はいま、出会っていますよ。この女性なら…クリスと同じく、私達の良き理解者になってくれるかもしれませんね…)
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