第13.5話 秘宝を守り続ける執事長
落ち着いて居られるわけないでしょう!!あの子がいなくなったのよ!?…探しに行かなくちゃ……離して…クリス!!……私は…あの子の……
(シャルル様が行方をくらました直後、セシリア様は半狂乱のように取り乱し始めていました。そして近くには、お嬢様の悲痛な叫び声を聞き付けた買い物客の皆様が、集まり始めていました。その時に、お嬢様はシャルル様の母であることを口にしようとした為、私は咄嗟にお嬢様の口を手で塞ぎました。本当なら公で口にしても何ら問題はない事ですが、一般的な女性とは違い、お嬢様、セシリア・ローズ様はフランス国民の憧れ、穢れなき秘宝と印象付けられてしまっています)
セシリア様、申し訳ございません…他の者達は引き続きシャルル様の捜索を続けよ…セシリア様は私が保護、お傍に居るから問題ない…。お買い物途中の皆様、お騒がせして誠に申し訳ございません…引き続きお買い物をお楽しみくださいませ…
(買い物客の中には、セシリア様のお姿を写真に納める方もいらっしゃいました。そんな真っただ中で、母である事を口にしてしまっては、本国に帰国した際に、お嬢様に危害が加わる、その危険性を考えて得策ではないと考えた結果、私は、お嬢様の口を閉ざしました。そのお嬢様の瞳からは、私を睨み付けるような悲しい表情が向けられていました)
セシリア様…確かに貴女様は……シャルル様のお母君です…貴女様が旦那様達に気付かれないように、身を守りながら振る舞っていた。あの数か月の日々、そして中絶期間を終えた先で…行われた……極秘出産…誰が…あのような出産を喜ばれますか!!…本当なら使用人の者達…皆に見守られながら、シャルル様を出産して欲しかった…
(病院関係者も極数名の中で行われた極秘出産、そしてローズ家の現当主様と奥様、そして私が見守る中で行われた極秘出産…。今でも旦那様の言葉は、私の心に痛烈に残っています。セシリア様には、とてもでないが聞かせられない言葉を、あの御方は吐かれました)
あの男の面影はないな…
(本来の父君なら、孫が産まれて祝福の言葉を送るのが道理。その、たった一言をセシリア様に私は言って欲しかった。お疲れ様、そしておめでとう、という祝福の言葉を。それらの言葉を送られた方は、別の御方でした。そして私は、離れのベンチにお嬢様を腰掛けさせると…)
お飲み物を買ってまいります…ここを動かないで下さいね…
(そして私は自販機に近寄り、飲み物を買おうとした時でした。懐かしい本国の子守唄が何処からか聞こえて来ました。その歌声に惹かれて、視線を向けたその先で……)
…!?……清……二…様…
(そこにはセシリア・ローズ様の想い人にして、膝の上で日本に来てから安らかに眠れる日々が無かったかのように、本当に安心した様に眠っている、シャルル・ローズ様がいました。このお子様の実の御父上と私は再会していました)
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