第13話 母の思いも乗せて歌う父の愛情

それじゃ…まるで…子守唄じゃないか…




(留学先でまだフランス語も不慣れだった当初、問題の一文で悩んでいた俺に、彼女はお淑やかに笑うと、俺に、この一文の内容を細かく説明してくれた)






…子守唄も何も…これは子供を寝かしつける為に親が…家族達が大事な子供達に歌い聴かせる…、子守唄そのものだもの…。清二…貴方もいつか親になったときにわかりますわよ……この歌の意味がね…ふふっ…






(セシリア、不思議だな…、君から教わった子守唄を、見ず知らずの子に歌い聴かせている。この子の親も歌い聴かせていたのかな?君とは添い遂げられなかったけど、今でも愛している。この気持ちだけは、誰に言われても譲るつもりはない。俺だけの思いだ…)




セシリア…君に会いたい…




(その時のことを思い返していた俺は、見ず知らずの子に、セシリアから習ったフランスの子守唄を歌い聴かせていた。すると、男の子は俺の子守唄を聞きながら安心したのか、熟睡し始め…小さく言葉を放った)




……ママ…




(やはり子供には母親が必要なのだと、この子の言葉を聞いて、改めて実感させられた。そして男の子の目尻から涙が流れているのを見た俺は、幼子の目尻をハンカチで涙を拭き始める)




君のパパもママも、君の事を一番に愛しているよ…だから君の両親が迎えに来るまで…俺が守るからね…




(この子の髪を優しく撫でながら、脳裏によぎる数日前の記憶が蘇って来た。それは、仕事を終えて帰って来た自宅のテレビで見たニュースで、セシリアの隣に立っていた子に似ているなと思い返し始めていた。その数日後に、彼女の父親の息子と報道を受けて安心したと同時に、彼女に弟はいなかったはずと、思い返していた時だった。視界の端に、俺の事を見つめる視線を感じて視線を向けると、其処には…)




えっ!?…なんで貴方がここに……




(視線を向けた先にいたのは、彼女と俺が引き離された時に助け船を出してくれた、恩人と言っても過言のない御方が立っていた)




……クリスさん?!…




(ローズ家の執事長がここにいるという事は、近くに彼女が来ているという事と考えた俺の心臓は、鼓動が早まる感覚を味わった)

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