第11話 心を力強く解き放った息子
(シャルルのお披露目会の日本国内行脚を行い続けて行く中で、私は息子の心が冷たく閉ざされて行く感覚を味わいました。それはまるで、遠い昔の自分を見ているような錯覚を覚える程でした。そして日本国内行脚を終え、帰国する前日の日に、クリスが気を利かせ父と母とは別行動をしてくれて、シャルルと私、そしてクリス、数名の使用人達で都内の有名デパートを訪れました。もちろんテレビの取材も受けていた為、顔を隠すために、少しながら変装もしていました。私とシャルルは帽子とサングラスをして、店内を歩いていました)
…シャルル…何か欲しいものはあるかしら?…
(私達を警護する様に、使用人達が周りを取り囲んでくれていました。この時点では、警備は万全だと思っていました。あの子が…あのような行動をするとは、思ってもいませんでした)
…シャルル?
(ずっと返事を返してくれない、愛しい息子に問い掛けた時でした。突如、シャルルが私の手を振り払って、大きな声を上げました)
嫌!!マァマも!!じぃじも、皆、嫌いだもん!!
(そしてシャルルは、小さな体で走り始めると変装の帽子も投げ捨てて、使用人達の手も擦り抜けて店内に消えてしまいました。そして私は息子の名を叫び始めました)
シャルル!!クリス…どうしましょう…あの子が…あの子が…!!
(私は錯乱状態になっていました。クリスの落ち着いた声で宥められても、クリスの声は私の心には届かずにいました……)
セシリア様、落ち着きなさい!!シャルル様はきっとご無事です。店の外に出る事はきっとございません…ただいま警備の者達が全力で、シャルル様の捜索に当たっております…
(近くの椅子に腰かける様に促されますが、私は珍しくクリスの言葉に反発しました)
落ち着いて居られるわけがないでしょう!!あの子がいなくなったのよ!?もしもあの子の身に何かあったら…私は……
(清二に一生顔向けできない。言葉に出すこともできない為、心の中で想い人に語りかけました。近くの警備の者達は、別行動をとっていた父と母にも連絡を入れた様で、もうじきこのデパートに両親が訪れてしまいます)
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