第10話 変わり果てた愛する息子の姿
…申し訳ありません…お待たせ致しました。参りましょうか…あの子が会場で待っています…
(泣き続けた私はドレスに着替えると、涙の痕をメイクで上手く誤魔化しました。そして外で待つ執事の方達に謝罪をすると、会場に向かい始めました。その際、私はクリスの傍を通ると、彼の耳元で囁きました)
…ありがとうございます…クリス…いいえ、もう一人の私の父上…
(心の底から笑える真実の笑顔とはいきません、多分私の心の底からの笑みは…脳裏によぎる、細野清二、そしてシャルル・ローズ。そしてクリス。この三人が揃う時だけだと思っています。そしてしがらみのない自由な場所で、私は…)
いいえ、滅相も御座いません!お嬢様がまた昔のような笑みを浮かべて下さるのを、私達一同心よりお待ちしています…さぁ、参りましょう…
(そして執事達に守られながら大広間に到着しました。そして私達の目に飛び込んで来た光景は、昔の私を見ているような光景でした。其処に居たのは、愛する息子が父の手を握りながら、笑みを浮かべずに下を向いた姿でした。そんな息子の姿を見た私は、駆け出そうとしますが…)
なりません!!セシリア様…耐えて……今だけは…耐えて下さい…
(クリスの手を振り解いて、駆け寄りたい衝動に襲われました。そして振り返って見たクリスは、普段の気丈に振る舞い続ける姿ではなく…若者達に決して弱味を見せて来なかった彼が、うっすらと涙を流している姿が見えました。そんな彼の姿を見ては…私は…立ち止まり、クリスと共に…)
申し訳ございません。この様な大勢、人が集まる所は初めてなもので…シャイなもので申し訳ない。これから跡取りとして、しっかりと躾けますので…
(父は、参加者の皆様の元にあの子を連れて回り続けていた。そしてあの子の事を後継者として皆様に紹介をしていても、シャルルは一言も口を開きませんでした。そして息子が口だけを動かしている姿が見えました)
……
(お父様の演説を聞いていた私は、初めてお父様に対して恨みを持ち始めてしまいました。私の心だけでなく、シャルルの心まで閉ざす行為をした事に私は、愛しい息子、シャルルを裏手から見つめます。このままでは、シャルルまでもが壊されてしまいます。何とかしないと…!!そして私は、心の中であの人の名を告げました)
助けて……清二…
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