第16話 初○○

南方の鉱山の麓にある町。


ラゲーサは、インパルスドラゴンの求愛行動によって壊滅的な被害を与えられていた。


『イリス。ここは一体どこだ?』


「こ、ここは、ら、ラゲーサです‥…‥」


ラゲーサっていうのは、教師とレイラの会話の中でちょくちょく出てきたキワードだ。


場所の名前だとは思っていたが、こんな無惨な場所だったとは‥...‥


隅々まで焦土化し、あっちこっちに残火が残ってる町を見つめ、そんな事に考えに耽ていたら、途轍もない大きさの咆哮が轟いた。


「GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAR!!!!!!!」


『うるっさ?!』


「くッッッ!」


咆哮の主は、空にて、こちらを見下す大きいドラゴン。


イリス達の言葉によると、インパルスドラゴンたる【魔獣】だろうか。


その見た目は、一軒家を優に越える体格で、灰色の甲殻に覆われており、その巨体を飛ばす為に翼もスゴくデカい。


モンハ○かよ?!


この両手に双剣と鬼人化できるスタミナがあれば‥...‥あっても無理だけど‥...‥


「な、ナカユビさんッ!戦闘に入ります!【スパティアナ・ゼロ】!」


『え』


イリスが呪文を唱え、何もない空間から一振りの剣を取り出し、ドラゴンを目掛けて突っ込んだ。


『すこsィイイヤアアアアアァアアアアァァァァア!!!!』


その風圧に耐えられなかった俺は、今日一番の悲鳴をイリスにプレゼントする。


イリスはそれを無視して、まだ焼ききれてない建物の屋根を踏み台にし、ドラゴンに急接近する。


キィィィン!


剣と甲殻がぶつかりあい、鮮やかな火花と甲高い金属音を散らせた。


空かさず連撃を叩き込み始める。


『オヴォオオオオオオ!!!!』


それに従って、悲鳴を重ねる俺。


首筋。翼の付け根。甲殻の隙間に無理やり斬撃をネジ込む。


でも、俺の状態が心配なのか、連撃を中断し、魔法で華麗にフィナーレを刻んだ。


「【フレイム・ガノス】!」


ドラゴンの顔面に紅蓮の爆炎を咲かすイリス。


「GROOOOAAAAAAAA!!!!!」


ドラゴンは嫌がるように空中で身を捻り、イリスを振り落とした。


イリスはドラゴンの真下で、スタイリッシュに着地を決め、左手をニギニギと動かして、ドラゴンの腹部に狙いを定め、呪文を唱えた。


「【リア・フェリーレ】!」


ニギニギしていた左手に白く光る槍が握られ、それを全力で投げる。


ブスッと肉が壊れる気色の悪い音と共に、白い槍がドラゴンの腹部に突き刺さる。


「【ロウスト】」


呪文と共に、ドラゴンの腹部に突き刺さった槍が爆発した。


「GIAAA‥...‥AA‥...‥」


ドラゴンの断末魔聞こえ、肉と血の雨が降る。


ドシャッ


内臓みたいな肉塊がイリスの右手の布とぶつかって、布が剥がれる。


腐った右手が露出されると同時に、熱くドロドロとした空気が俺を襲った。


『殺‥...‥した‥キメェな‥...』


「は、はい。き、キモキモです!」


『なんか‥...疲れる‥...‥』


レイラに振り回される、イリスに振り回される。


異世界に来てから、勉強に付き合ったり、爆発宣言のバーゲンセールだったり‥...‥


殆ど寝た事ないからな‥...‥中指は寝なくても大丈夫か?


あと、血なんて鼻血以外見たことないし。


殺しても、何も感じないのかな‥...‥


複雑な心情が頭数を駆け巡る中、レイラの言葉を思い出す。


『イリス、生徒の救出は大丈夫なのか?』


「は、はい?せいとーって‥...‥あ、い、今行きましょう!」


思い出したのか、イリスは慌てて、鉱山に登るのであった。




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