第14話 実力なんかねーよ。うるせーよ。黙れよ。
流した汗がすぐ蒸発する暑さ。
インパルスドラゴンが爆発させた鉱山は、どんどん炎の波を広げていた。
「これはヒドいですね‥...‥」
『小さな砦があった筈だ。』教師が言ったことを思い出した私は、それらしいモノを見つける為に、鉱山に登りましたが、元が砦だと思われるものは、炎に呑まれ、一部焼き爛り、原型を辛うじて留めていました。
砦以外に他にインパルスドラゴンと渡り合える手段がないか悩んでみるも、私一人でインパルスドラゴンに抵抗できるのは、砦しかないと結論を出しました。でも、その砦は使い物にならないので、繁殖期の為、動く筈のないクソドカゲが何故暴れだしたのかを考え始めました。
クソドカゲ、もといインパルスドラゴン等の竜類は【魔獣】の中で極めて特殊な生態をしている。
まず、竜類は生きていない。生物として体が機能していない。
生命として機能していない。それだけ聞くと腐体類や霊類などと同じように聞こえるが、竜類はそこら辺の【魔獣】とは格が違う。
魔力を食らうマジックイーターなのだ。
初代魔王が現れるまでは、龍神やタツガミなどと呼ばれ、魔族達に崇められていた存在が竜類だ。
そんな竜類はとても縄張り意識が高く、縄張りに侵入してくる敵には、容赦なく襲い掛かる。
そう、敵にはだ。
【魔獣】という大きなカテゴリーの中で、竜類は群を抜く戦闘能力を持っている。
だから、敵と認めたモノ以外なら余程の事をしない限り、襲ってくることはない。
それは、鉱山に住み着いても、麓の町には手を出さなかった理由にもなる。
タナトスの南方の鉱山には、このクソドカゲ以上の強さを持った【魔獣】は存在しない。
クソドカゲ以上の強さ?
少しの違和感を覚え、依頼書に書かれてた情報と今の状況をパズルのように合わせてみる。
大きく鉱山を爆発させる。
クソドカゲは繁殖期。
クソドカゲ以上の強さを持った【魔獣】は存在しない。
クソドカゲが炎を纏って飛び立つ。
「っまさか!」
クソドカゲがもう一体いる可能性。
ハデシスで竜類について学んだ事を記憶の彼方から呼び起こす。
『竜類は、五十年に一度のタイミングで繁殖期に入ります。これは、多大な魔力を使う為であり、魔力が生命源である竜類が行う命懸けのプロポーズなんです。』
依頼書に繁殖期と書かれている時点で気付くべきだった。
竜類が繁殖期に入る事は珍しい事ではあるが、成功しない場合が殆どだ。何せ、竜類自体が珍しい存在であり、偶然にも、同種で繁殖期に入ってる竜類は見つけようにも、見つからないものだから。
『このプロポーズには、個体によって細部が違って来ますが、結局内容は全部一緒です。力自慢です。』
そう。先ほど、クソドカゲが鉱山を爆発させたりしたのは、求愛の行動。
"私はこんなにも炎が吐ける。"
"私はこんなにも高く飛べる。"
迷惑過ぎるプロポーズだ。
推理を一度終えた私は、クソドカゲの方を見つめました。
相変わらずの熱気。
何もないところへと、咆哮をあげるクソドカゲ。
明日にはA級が来る。それまで待ち堪える。
シンプルだが、故の絶望感を味わう私。
私に出来るでしょうか?
D級の私が。
‥..‥‥..."悩む暇があったら、突き進め"ですか‥...‥
それも悪くありませんね。
腰に巻き付いておいた杖を引き抜き、構え呪文を叫びました。
「【リア・ゼロ】!」
白い魔力が杖の先端に集まり、弾丸のように打ち出された。
・・・
学舎ハデシスの遠方観台。
ステラを心配したその担当教師が、念のために使い魔を追いかけさてたが、まさかの大当たりだった。
「ラゲーサにて、インパルスドラゴンが求愛行動を取りました!ラゲーサの六割が壊滅状態!」
『住民達の避難状況は?!』
「分かりません!」
『転移ポータルはまだか!』
「現在修復中です!」
インパルスドラゴンが求愛行動を取る時、ついでとばかりに吐かれた豪火球により、町は六割が壊滅状態。転移ポータルも潰れた絶体絶命の状況。
「何事ですの?」
「れ、レイラ王女?!何故ここに?」
「何故って、コネ使いに来ましたわ。」
『こ、こね~?』
ドレスを着て、飾りという飾りを自分に盛り付けた王女レイラが、学舎に来ていた。
後ろには新種の魔獣(?)と思える白い布地とドレスを混ぜたキメラがモジモジしており、右腕の指輪がチカチカと光っていた。
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