第12話 未成年が酒場に入っちゃった件について。

タナトスから少し離れた南方の鉱山。


その麓にある町。ラゲーサの酒場で、ステラは監視役として後から来た学舎の教師と対面していた。


「つまり、後二日待てと‥...‥」


「うん。そうなるよ。まさか、インパルスドラゴンと一人で戦わせると思ったの?」


教師が言うには、さすがにインパルスドラゴンをDランクの私一人で討伐させるのは無理があるらしく、丁度二日後、再試験を受ける生徒がおり、その生徒と二人で討伐させるそうだ。


「二人でもキツいのでは‥...‥」


「再試験を受ける子はA級のライセンスを持っている。二人でも大丈夫だ。多分。」


学舎ハデシスに依頼される案件は、冒険者組合と同じく、S、A、B、C、D、Eランクで難易度を決めている。


違いがあるとしたら、Sランクの有無だろうか。


冒険者組合にはSランクが存在し、ハデシスには、Sランクが存在しない。


だから、ハデシスでは実質、AランクがSランクみたいなものだ。


「その子のロール(職種)は何ですか?」


「エクソシティナイトだと聞いてるよ。珍しいよね。」


魔法剣士の類いですか‥…‥大変珍しい事で。


「何で、Aランクでもあろう人が再試験を?」


Aランクとは、ハデシスに十数人しかいない文字通りの優等生。


入りたくても入れない名門校である学舎ハデシスで、そこまでの地位を手に入れておいて、再試験を受けるのならば、相応の理由があるはず。


「それは言えないし、その子にもその質問をしない方がいい‥...‥これは教師としての忠告だ。」


"それ以上踏み込むな"とハッキリ拒絶される。


少しムッとなったが、教師のいう通りにすべきだろう。


教師の忠告には、いつも理由がある。


昨年、私は忠告を無視して、死にかけたメリアを通して、痛いほど知っている。


「私は待機でいいですか?」


「それで良いと思うよ。」


酒場の店員へのチップと思しき硬貨を何枚か、机に置き、教師は立ち去った。


取り残されたステラは、二日後、会うAランクの人がマトモな人である事を祈るだけだった。



・・・



私は今、とても、お勉強を頑張っています。


二日後にある再試験に臨んで、座学を徹底的に叩き込んでいます。


実技の方は毎回ランダムだそうですし、対策のしようがありません。


『そこ間違えてるよ。』


「ほ、ほんとうだ。」


もちろん、ナカユビさんも手伝ってくれてます。


これなら、案外何とかなるかも知れませんが、ナカユビさんは『試験なめんなよ‥...‥』と、さらに座学を叩き込もうとします。


まるで試験がトラウマのように。


私がもっと頑張らないと。


私はさらに意気込みます。





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