第10話 この○○が終わったら○○するんだ。
太陽が沈み始めた夕暮れ。
黒髪の少女が教室の隅の机に伏しているナマケモノに声をかけた。
「ステラ!課題の方はどうなった?」
ナマケモノが意味深にボソリと呟いた。
「終わった‥...‥」
「マジ~?!めっちゃ意外!」
ナマケモノのような少女は今まで、何百回も課題を忘れ、教師達を震えさせた化け物。
そんな少女が課題を提出したと言う。これに驚かずにいられようか?
「ある意味‥...‥ね?」
「ある意味かーい!」
意味深に呟いた一言は、まさかの居残り宣言。
ステラと呼ばれたナマケモノのような少女(行動パターンが)は、これから教師と楽しい(?)二人っきりのデート(?)を送ることとなる。
黒髪の少女は哀れむ目で見つめるだけだった。
そして、言った。
「生きて‥.....戻って来てね?」
それに対し、ステラは遠い目をして、誓うように言った。
「戻って来るさ‥...‥今までのように‥....‥私、あの課題を終えたら、家に帰るんだ‥...‥」
二人を見守るように夕日の光が、教室の窓から差し込む。
そして、その夕日を遮るように、教師たる男が現れた。
「おーい。ステラ‥...‥ついて来い‥...‥時間だ。」
「メリア‥...‥行ってくる‥...‥」
黒髪の少女。メリアは、ステラを引き留めたがった。でも、引き留められなかった。
メリアは知っていた。
今回で統計、七百五十三回課題を忘れたステラは、遂に堪忍袋を切らした教師達によって、退学の危機に迫っていた事を。
メリアは知っていた。
今回の課題まで未提出ならば、即退学になっていた筈だが、心優しい一人の教師によって、起死回生の一手を手に入れた事を。
メリアは知っていた。
ステラが毎日書いてる日記の裏には、イタイタシイ青春ポエムで埋め尽くされてる事を‥…‥あ、これは関係ないから忘れてほしい‥…‥
兎に角、この学舎に入学してから、ずっと親友でいてくれた子が、退学するかも知れない時に何一つやってあげられない悔しさに、メリアはただただ、拳を握るだけだった。
教師とステラが教室から出ていく。
ステラと目が合うが、敢えてそれを無視する。
別れでも、もっとマシな別れが欲しかった。
出ていってしばらく、ステラの悲鳴が廊下から教室にまで届いた。
・・・
パラパラと教科書をめくるイリス。
「え、えーっとが、ガイアナームとパックスオーク‥...‥」
『違う。ガイアラームとアックスオークだ。』
再試験まで、三日という爆弾宣言を聞き(余命宣言と家庭事情だけでも、十分なぐらい爆弾だが)、急遽、イリスの部屋に戻り、俺は小さなこの体を張って、イリスの勉強に付き合っている。
後、驚くことに、この世界の文字が何故か読める。
これが転生特典ってやつ?タダで外国語習得とか、豪華過ぎんか?受験の時にこーゆーのが欲しかった。英語は無双やん。
でも、前世の事を引きずってる訳にはいかない。早くこの世界の知識を吸収しないと。
見たところ、この世界には【魔獣】と呼ばれるのが生き物が存在しており、大体は害をなす生き物だそうだ。
ドラゴンやゴブリンなど、元の世界じゃあ、実在していない生き物も、この世界には存在している。
今はその【魔獣】について勉強している。
【魔獣】と断片的に言っているが、【魔獣】の種類は五千種類を越えており、再試験に出てくる【魔獣】は六百種ぐらいだ。英単語みたいに覚えなきゃ、到底覚えきれん。
「え、エネティックサウルス!」
『ペネティックサウルスだ。』
三日以内に全部を叩き込むのは無理か?
俺は悩み始めたのであった。
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